暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
翔べない鳥の翼
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ていた。
 「虹……奴の力か」
 顎に指先を当てて記憶を探る。
 無様な姿で彼女と共に戦い、呆気なく死んだ愚かな男。
 本来の力では無いだろうと思っていたが……なんらかの形で遺した物を、クロスツェルが引き継いだ、か。
 本はともかく、結晶や奴の力まで集めているとなると少々厄介だ。逃げたのは力の使い方が不明瞭だからだとして、覚えられるのは風向きが悪い。アリアはまだ完全ではないし、完全になるのを拒んでいる。
 「甘やかすのも問題ありだな」
 あと一息の所まで辿り着いておきながら、するりと逃げ出した可愛い小鳥。
 今は手元に戻って、以前と変わらない振りをしているが……さて。
 「アリアは神聖なる女神でなければならない。だが、人間は信仰による救済も利用し始めている。現代の人間を掌握する物は何だ? 人間を動かす衝動は何処に在る?」
 軽く地面を蹴って垂直に跳び上がり、地平線を望む位置でふわりと浮かぶ。
 ああ……やはり、この世界は時を超え形を変えても美しい。美しい物は尊ばれるべきだ。
 「声が聴きたいな。きっと、この世界のどんな音より繊細で力強いのだろうに」
 久しぶりに会うのも良いと思ったが、結晶はもう少し後にしよう。
 楽しみはゆっくりと……だ。


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