翔べない鳥の翼
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晶』は欲しい。面白いことに使えそうだ」
『結晶』?
手に持ったままの、白い布袋を見る。
袋から出さなくても、レゾネクトには中身が見えているのだろうか。
いや……あるいは、空に伸びた光をどこかで見ていた?
それで、光の源に転移してきたのか?
「この宝石が何なのか、貴方は知っているのですか?」
「ああ。貴様ら以上にな」
「そうですか。分かりました。では、これはお渡しできません。絶対に」
ベゼドラのコートの背面を少しだけ摘まんで、軽く引っ張る。
振り向きはしないが、意味は通じたと思う。
「ロザリアもそうだが、現代には面白い人間が多いな。アリアが姿を隠してしばらくの間は絶望と空虚しかなくて、飽々していたんだが」
「お褒めいただき、光栄です」
自分が にこっと微笑むと。
レゾネクトも ふっと笑い。
再び動いた。
自分に向かって伸びる腕を、ベゼドラが弾く。
その背後で黒い本をしっかりと抱え直し。
袋を落とさないよう、コートの胸元にある内ポケットにしまった。
「その日記、あの家から持ち出したのか」
まったく本気ではない様子で、ベゼドラと拳や蹴りを交わしながら。
レゾネクトが黒い本をチラリと覗き見た。
この本の存在まで知っているのか。
「集まれば集まるものだ。皮肉な」
「ぐ……っ」
ベゼドラの腹部に、レゾネクトの右手が沈む。
衝撃で自分に向かって吹っ飛んできた褐色の巨体を避け。
悠然と歩み寄ってくるレゾネクトと向かい合う。
「もう少し頑張って欲しかったんですけど、仕方ないですね」
「ベゼドラ程度では、盾にもならないぞ?」
「ええ、まあ。教会で瞬殺されてましたし。騎士が使う盾のような頑丈さは最初から期待してませんでしたが」
「……て、め……、ざけん な、よ クロス……!」
肩を持ち上げて苦笑すると、斜め後ろから苦情と呻き声が聞こえてきた。
ふざけるなもなにも、単なる事実でしょうに。
「自らが強ければ良かったな? 神父クロスツェル」
ゆっくりと、レゾネクトの手が近付いてくる。
さて、自分は間に合うだろうか?
「神父はもう辞めています。そうですね……。これからは」
レゾネクトの指先が、本に触れるかどうかの際で。
ああ、良かった。
なんとかなりそうだ。
「『魔法使い』……とでも、お呼びください」
しゃらん、と軽やかな音を立てながら。
虹色に光る無数の羽根が、どこかから自分の周りに集まってきて。
一斉に、ぱん! と弾ける。
そして世界がピタリと止まり、色を失った。
「なるほど。こういうことですか」
無色の世界で、白黒のレゾネクトが石像のように固まっ
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