暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
翔べない鳥の翼
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張って欲しかったんですけど、仕方ありません」
 「ベゼドラ程度では盾にもならないぞ?」
 「ええ、まあ。教会で瞬殺されてますしね」
 「……てめ……ざけん な、よ クロス……」
 肩を持ち上げて苦笑すると、斜め後ろからベゼドラの文句が混じる呻き声が聞こえた。
 事実でしょうに。
 「自らで強ければ良かったな? 神父クロスツェル」
 ゆっくりと手が近付いてくる。
 さて、自分は間に合うだろうか?
 「神父はもう辞めています。そうですね。これからは……」
 レゾネクトの指先が本に触れるかどうかの際で……あぁ。なんとかなりそうだ。
 「魔法使いとでもお呼びください」
 しゃらん……と軽やかな音を立てて虹色に光る羽根が自分の周りに集まり……
 ぱん! と弾ける。
 世界がピタッと静止し、色を失った。
 「……あ。こういう事ですか」
 無色の世界で白黒のレゾネクトが固まっている。ついでにベゼドラも、苦悶の表情で地面に転がったまま。
 光は断続して降り注ぎ、屈折して人の目に色を認識させるという。
 つまり、時間が止まった世界に色は無い、と。
 光源が無い状態なのに無色で済んでいるのは、自分の時間が動いているからだろうか。
 ご都合主義だな。
 「……ベゼドラ、動けますか?」
 靴跡が残らない雪の上を歩いて、ベゼドラの肩をぽんっと叩く。
 「……っが、はっ」
 急に咳き込み出したベゼドラにも色が戻る。
 あ、なるほど。この場合の光源は自分になると考えれば良いのか。
 「な、んだ……こりゃ……。耳が痛ぇ」
 「振動が殆ど無い状態ですからね。静寂が耳に痛い、を極めてますよ。貴重な体験です」
 呼吸の為にベゼドラと自分の周りの空気だけは動かしているが……水中に居るような、奇妙な感覚だ。
 「は……っ 出鱈目も良いトコだな。さすが世界樹の授け物」
 「ええ。本当に滅茶苦茶です。どんな力だろうと思ってましたけど、世界規模で時間を止めるとか……びっくりしました」
 使い方は自然と理解できる。ええ……確かに解りましたが。
 すっごいギリギリで、内心とても焦りましたよ、長様。
 「アリアに敵う力……か。そりゃそうだ。こんな反則、何処のどいつが持ってたんだか」
 「普通に考えて神でしょう。神々に仕える誇り高い一族が護っていたのですから。それより、急いで此処を離れますよ。長く止めてはいられません。正直もう辛いです」
 今の隙にレゾネクトをどうにかできれば良いのだが、戻りも進みもしない体は多分、傷一つ付かない。柔らかい筈の雪に足が沈まないのと同じように。
 時間の静止は変化の停止、か。興味深い。
 「外付けの癖に消耗すんのかよ! 面倒臭ぇな!」
 ベゼドラが慌てて立ち上がり、自分の腕を肩に掛けて背負っ…… え?
 「
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