翔べない鳥の翼
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彼に何を言っても訊いても、まともな答えは返って来ないな。思案を放棄してロザリアだけを想っているのだろう。羨ましいほどに愚直だ。そうしていてロザリアに会えるなら、自分もこんなに悩んだりしないのだが。
「なんだ。貴様等か」
「…… っ!?」
突然。
目の前に、黒い影が現れた。
金色の短い髪、紫色の目。アリアと共に教会から消えた、悪魔の王。
「レゾネクト!?」
ベゼドラの手が瞬時に自分の腕を引っ張って背後に庇った。力の加減ができなかったのか、勢いで転びそうになるのをなんとか堪える。立っていた場所にレゾネクトの手が走った。
「ボサッとしてんじゃねぇぞ、クロスツェル!」
いえ、見えませんから。
普通の人間に、あんな素早い動きは絶対追えませんから。
「仲良くアリアを追い掛けている訳か。悪魔としては減点だぞ、ベゼドラ?」
「悪魔に採点などあるのですか? ベゼドラ」
「アホか。余裕こいて下らねぇ話に乗ってんじゃねぇ。殺されるぞ!」
そうは言われても……愉しそうに微笑む悪魔を見れば確かに危険だと思うのだが、殺されかけた記憶の所為で圧倒的な力の差を自覚してしまっている。調理台に乗せられた魚の気分だ。諦めて命を差し出すつもりは毛頭無いが、笑うしかない心境に近い。
「安心しろ。神父はまだ殺さない。アリアがそう願っているからな。だが、その結晶は欲しい。面白い事に使えそうだ」
結晶?
手に持ったままの袋を見る。
袋から出さなくても、レゾネクトには中身が見えているのだろうか。
いや……何処かでさっきの光を見た? それで光の源に転移してきたのか?
「これがなんなのかを、知っているのですか」
「ああ。貴様等以上にな」
「そうですか……。分かりました。では、これはお渡しできません。絶対に」
ベゼドラのコートの背面を少しだけ摘まんで軽く引っ張る。
振り向きはしないが、多分意味は通じた……と、思う。
「ロザリアもそうだが、現代の人間には面白い奴が多いな。アリアが姿を隠して暫くの間は絶望と空虚しかなくて飽々していたんだが」
「お褒めいただき光栄です」
にこっと微笑むと、レゾネクトも ふっと笑って再び動いた。私に向かって伸びる腕をベゼドラが弾く。その背後で黒い本を両腕でしっかり抱え、袋を落とさないようにコートの内ポケットに仕舞った。
「その日記……持ち出したのか」
全く本気ではない様子で素早い拳と蹴りの攻防を交わしながら、王がチラリと黒い本を見た。
この本の存在まで知っているのか。
「集まれば集まるものだ。皮肉な」
「ぐ……っ」
ベゼドラの腹部にレゾネクトの右手が沈む。
衝撃で吹っ飛ばされた褐色の体を避けて、悠然と立つレゾネクトと対峙する。
「もう少し頑
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