暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン〜Another story〜
ALO編
第139話 兄妹
[3/11]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
現が一番当てはまる。


「っ……っ……」

 ギリギリと首に食い込んでくる指。仮想世界でも、その苦しさは現実と差異がなく、必死に仮想の空気を吸い込もうとするが、阻まれてしまう。

 暫くして、その手をゆっくりと離した。

「っとと、すまないな。少し感情的に成り過ぎた様だ」

 歪んだ表情こそ元に戻していたが、その裏には確実に炎はまだ燃えている。黒く歪な憎悪の炎が。

「ごほっごほっ……!」

 玲奈はむせながらも必死に空気を吸い込んだ。目からは涙が思わず溢れそうになっていた。

「あの餓鬼は此処へ来るだろう。が、あの餓鬼に期待はしない事だ。何も出来ずにくたばっていくだけだからな。……そして、全てが終わったら、お前は用済みだ……と言いたいが、お前の一存を決めるのは須郷、ここではオベイロン、だったか? だから、もう諦めろ。お前がいつもの日常に戻れる事は無い。……あの研究を知っているのなら、判るだろう?」

 軽く笑みを見せながら、背を向けた。

「全てが終われば、今の(・・)お前に戻れる事はない。……が、嘆く事も無いのではないか? ……全てを変えられると言う事は、忘れられると言う事、だからな。……あの餓鬼の事も、全て」

 そう告げると……、扉を再び開き、そして出て行った。

 静寂が再びこの部屋に訪れる。

 玲奈は……ぎゅっと身体を抱きしめた。震えそうになる身体を必死に抱きしめた。

 どんな事にだって、耐えてみせる。あの世界でも2年もの長い間、諦めないで頑張り続けた。皆と一緒に、頑張ってきた。だけど、それでも……。

「りゅう、リュウキ……くんっ……りゅうき……くんっ……」

 涙がこぼれ落ちる。目を瞑れば、今でも思い出せる。


――……初めてあったあの日の事。
――……泣いて、泣いて……、1人になってしまって、そして泊めてくれたあの日の温もり。
――……心の闇を打ち明けてくれて、心を開いてくれてたあの日の事。
――……想いが伝わったあの日の事。
――……楽しそうに笑って、あの湖畔の沿道を一緒に歩いた日の事。


 思い出せる。聞こえてくる、今でも感じ取れる。優しい思い出として。

 でも、ここで叫んでもどれだけ想っても、届かない。彼の元に、届く事はない。それでも……諦めないとずっと誓っていた。でも……。

「忘れたく……ない……、忘れたくない……嫌だ……っ」

 思い出の全てを変えられる事、それが何よりも怖かった。全てを忘れてしまって、違う自分になってしまう事が何よりも怖い。……我慢なんて、出来ない。

 この思い出は自分の物、皆と、彼と一緒に作ってきた大切な……本当に大切なものだから。

 玲奈は、覚束無い足取りで、この部屋の外。窓の外……雲
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ