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鐘を鳴らす者が二人いるのは間違っているだろうか
28.希望が殻を破るとき
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目になったその太刀筋を受け止めようとした剣を翻した。ブレイブの剣が下に、イデアの剣が上に――この一瞬の攻防の継ぎ目こそ、カミイズミから教わった極意の一つ。
 そして、剣速でカタナに勝る剣などありはしない。イデアは渾身の力を込めてブレイブの剣へ自分の刀を振り下ろした。

「そこだッ!『牙折り』ぃぃぃッ!!」
「ぬうッ!?我が剣を!?」

 『牙折り』――この1週間のうちにイデアが身に着けた技の一つが、ブレイブの剣を強制的に地面に叩き付けさせる。それによってブレイブはその瞬間だけ、剣をイデアへ振るえなくなった。現実世界では僅か1秒程度の些細な隙――だが、真剣勝負ならばその1秒は勝敗を別つ。

 僅かな隙を見逃さず、イデアは返す刃をブレイブに全力で叩きつけた。

「行っけぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」

 『伊勢守』が虚空を煌めき、ブレイブの身体へと叩き込まれる――

 ガリンッ、と刃が止まった。

「え………」

 思わず絶句する。イデアの剣は確かにブレイブに命中していた。だが――その刃も衝撃も、鎧に阻まれ全く通っていない。まさに鉄の塊をなまくら剣で切ろうとしたときのような手応えに、イデアは一瞬言葉を失った。

「戦いの中で我を忘れるとは迂闊なり!受けろ、『シャインブラスト』ッ!!」

 その一瞬の隙もまた、真剣勝負では致命的な隙でしかない。
 ブレイブの持つ剣に眩い光が集中し手いる事に気付いた時には、もう遅かった。

「しまっ――キャアアアアアアアアアッ!!」

 爆発的な光と衝撃波の奔流が地面に激突し、イデアはいとも軽々と吹き飛ばされた。
 背中から地面に衝突し、ごろごろと転がって停止しイデアは、手をついて激しく咳込んだ。

「がはッ、げほッ!!けほっ……はぁ、はぁ……」

 背中がずきずきと痛みを発し、乱れる呼吸を必死で整える。咳込むと同時に咄嗟に体勢を立て直して剣を構えたが、ブレイブはまだ先ほどの場所に仁王立ちしていた。
 今のは、聖騎士の奥義の一つ『シャインブラスト』。自らの力を光属性に変換し、弾丸のように撃ち出す魔法に近い技だ。ブレイブはそれを地面に叩きつけることで剣を上に向けずにイデアを迎撃したのだ。その表情には乱れの一つもなく、イデアを見つめている。

「その程度か、娘よ」
「まだ……まっだだぁぁぁぁぁッ!!」

 イデアは駆け出し、何度もブレイブと衝突する。

 バルバロッサから盗んだ『海賊』の奥義。聖騎士に近い性質を持った『騎士』ハインケルから教わった攻防の極意。そしてそれのベースとなったイデアの剣術を支えるカミイズミの剣。その全ての知識を注ぎ込んで何度も何度もブレイブにぶつかる。

 だが、弾かれる。
 だが、見切られる。
 思いつく限りの猛攻を何度ぶつけても
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