語り継ぐもの 2
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えておくと良いですよ」
昨日も聴いたあの歌を、二人に歌って聴かせる。
人前で歌うのって、結構恥ずかしい。
得意じゃないんだけど。
「こんな感じ……って、 え?」
手に持ってる袋から、薄い水色の光が溢れてる。
慌てて宝石を取り出すと。
光は虹のような曲線を描いて空へと昇り、東の方角に伸びていった。
「えー、と……」
光はやがて細く小さくなり、宝石に吸い込まれて消える。
また、怪奇現象ですか。
そうですか。
「……あっちへ行けって意味じゃないでしょうか? 多分……」
宝石を袋に戻してリボンを縛り、クロスツェルさんへ手渡すと。
クロスツェルさんとベゼドラさんは顔を見合わせて、昨日のはこれかとかなんとか言いながら、互いに確認し始める。
この二人には、今見た怪奇現象の意味が分かっているのだろうか。
いや、分かってないのか?
どちらにせよ。
「私が任されたのはここまでです。これ以上は、本当に何も知りません」
宝石入りの袋をじっと見ていたクロスツェルさんが。
私に向き直って「ありがとうございました」と頭を下げ、目を細めた。
冷静なフリをしてるけど、内心では相当混乱しているな。
「お気を付けて。良い旅を」
まだ何か言いたそうにしているベゼドラさんの腕を無理矢理引っ張って、東の方向へと足を運ぶクロスツェルさんの背中を見送り。
私は、やれやれと家の中に引き返す。
これで、あの幽霊っぽい女性の未練はなくなっただろう。
私も、変化しない日常に戻れて嬉しいです。
お願いします。
二度と現れないでください、怪奇現象。
「さて。今日もお仕事に行きましょうかね」
自室へ戻り。
クローゼットから銀製の鎧一式を取り出して。
厚手の普段着から、無骨なそれに着替え直す。
この真っ赤なマント、もう少し落ち着いた色調にならないだろうか。
王都や街でならともかく、村でこの色彩は派手すぎる。
支給品だから仕方ないとはいえ。
法規にはもっと柔軟さを求めたいものだ。
クローゼットの横に立て掛けておいた細長い剣を腰帯に吊るし。
耳障りな金属音を引き連れて、完全武装で外へ出る。
ああ。
今日も、雲一つ無い青空と真っ白な大地が目に痛い。
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