語り継ぐもの 2
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、お二方。遅くなってすみません」
応接室で待っていた二人へ頭を下げる私に。
「いいえ」とクロスツェルさんが微笑んでくれた。
気にするな、ということだろう。
しかし、家人が客人より後に起きるなど、恥でしかない。
もう一度頭を下げてから、調理場へ向かう。
「この香辛料はこちらの調味料と相性が良いので、併せて使うと……」
「なるほど。では、こっちの葉は」
「あ、それは合わないと思いますよ。苦くなってしまいますから」
クロスツェルさんの丁寧な料理指導を受けつつ。
出来上がった物から順に、テーブルの上へと並べていく。
全部が出揃い、全員が席に着いてから、三人で美味しく頂いた。
期待以上の味わいは、涙が出そうになるほど嬉しいのだけど。
昼以降はもう食べられないのだと思うと、非常に切ない。
これが胃袋を掴まれるという感覚か。
恐るべし、クロスツェルさん。
ベゼドラさんが卵焼き入りのサンドイッチを一人占めにした気持ちも。
一欠片も残さずぺろりと食べ尽くした気持ちも、すごく、よく解る。
今後機会があれば、教えてもらったことを参考にして自分でも作ろう。
「……フィレスさん。突然こんなことを尋かれても困るとは思いますが」
洗い物を片付けてもらっている最中。
クロスツェルさんが、なにやら言い出しにくそうに話しかけてきた。
「この辺りで、不思議な現象を見たり聞いたりしませんでしたか?」
見ました、聞きました。
昨日の夜だけで二度も。
この家の中で。
あいあを助けて。
あれはきっと、『アリアを助けて』って言ってたんだな。
夢の中の泣き声が、幽霊っぽい女性と同一人物なら、だけど。
最後の皿を棚に戻し、クロスツェルさんと向き合う。
「すぐに発たれますか? それとも、少し休んでから?」
「特に何もなければ、すぐに発つつもりですが」
「では、玄関先で少々お待ちください。お渡しする物があります」
クロスツェルさんは首を傾げ、ベゼドラさんを伴って素直に従った。
私も自室へ戻って、机の引き出しから例の袋を取り出し。
旅支度を済ませて扉の外で待っていた二人に駆け寄る。
「多分、お二方への伝言です。『アリアを助けて』、だそうですよ」
二人の顔色が変わった。
そうか。
二人の旅の目的は、『アリア』に関わることなのか。
「誰にそれを!?」
私に噛みつきそうなベゼドラさんを制し。
クロスツェルさんが身を乗り出してくる。
必死だな。
「私も詳しくは……この袋に入っている宝石と同じ色の目を持った女性が、貴方達にこれを渡せと言うので。ああ、なんとなく関係してるっぽいので、この歌も覚
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