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逆さの砂時計
語り継ぐもの 2
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葉が泣き声と重なり、ぴん! と時が止まる。

 「あいの、うた」「私の、アリア」

 パッと目を開く。これは現実だ。
 見慣れた天井がベランダからの光を跳ね返して、室内を微かに明るくしてる。
 そういえばカーテンを引いてなかった。
 もう朝か。急いで身仕度して旅人達の朝食を用意しなくては。
 「おはようございます」
 「おはようございます。遅くなってすみません」
 応接用の部屋に腰掛けて待ってた二人に頭を下げると、いいえ、とクロスツェルさんが微笑んでくれた。
 家人が客人より後に起きるなど恥でしかない。もう一度頭を下げて、調理場へ向かう。
 「この香辛料は此方の調味料と相性が良いので、合わせて使うと……」
 「なるほど。では、こっちは……」
 「あ、それは合わないと思いますよ。苦くなってしまいますから」
 クロスツェルさんの丁寧な料理指導を受けつつ、朝食をテーブルの上に並べていく。
 全部が揃って全員が席に着いてから、三人で美味しく頂いた。
 ベゼドラさんが卵焼き入りのサンドイッチを一人占めしてぺろりと食べ尽くしたのが、ちょっと笑えた。
 「いきなりこんな事を訊かれても困ると思いますが……」
 洗い物を片付けてもらってる最中、クロスツェルさんが言い難そうに話掛けてきた。
 「この辺りで、不思議な現象を見たり聞いたりしませんでしたか?」
 見ました聞きました。昨日の夜だけで、二回も。家の中で。
 あいあを助けて……あれは「アリアを助けて」って言ってたんだな。夢の中の声が女性と同一人物なら、だけど。
 最後の皿を棚に戻し、クロスツェルさんに向き合う。
 「直ぐに発たれますか? それとも、少し休んでから?」
 「特に何も無ければ直ぐに発つつもりですが」
 「では、玄関先で少々お待ちください。お渡しする物があります」
 クロスツェルさんは首を傾げ、ベゼドラさんを伴って素直に従った。私も自室に戻って袋を手に取り、旅支度を済ませて扉の外で待つ二人に駆け寄る。
 「多分、伝言です。アリアを助けて……だそうですよ」
 二人の顔色が変わった。
 そうか。二人の旅の目的は「アリア」に関わる事なのか。
 「誰にそれを!?」
 私に噛み付きそうなベゼドラさんを制して、クロスツェルさんが身を乗り出してくる。必死だな。
 「私も詳しくは……。この宝石と同じ色の目を持った女性が、貴方達にこれを渡せと言うので。あ、なんとなく関係してるっぽいので、この歌も覚えておくと良いですよ」
 子供達の歌を歌って聴かせる。
 人前で歌うって結構恥ずかしい。得意じゃないんだけど。
 「……こんな感じ……って、 え?」
 手に持ってた袋から水色の光が溢れてる。
 石を取り出すと、光は直線となって東を示した。
 「えーと……」
 
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