語り継ぐもの 2
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に私を見つめる。
唇が動いてるが、何も聞こえない。注意深く観察して読み取ってみる。
「あい、あ……お、あ……う……え……え?」
あいあ お あうええ?
違う。
あうええは、た、す、け、て、じゃないか? お、は、を?
あいあ を 助けて?
「あ」
女性が目蓋を伏せて、溶けるように消えてしまった。
ヤバいなこれ。本格的に幽霊の類いじゃないか。殴れないものは苦手なんだけど……なんでかな。今の女性に恐怖は感じなかった。
悲しそうな顔をしてたからか?
「フィレスさん」
「っと……はい?」
背後の扉を叩かれ、慌てて鍵を外す。
掛けたり外したり忙しい。
「浴室へ案内しましょうか?」
クロスツェルさんに室内を見られないよう、素早く部屋を出て扉を閉める。
「あ、いえ……はい。お願いします」
? 何か言いたそうにして止めた?
「……此方へどうぞ」
手で階段を示しながら一階へ誘導する。
大人しく付いて来る辺りは、特に用事があった訳でもなさそうだが。
「では、私はこれで眠らせていただきます。ベゼドラさんは貴方が案内してあげてください」
「ありがとうございます。お休みなさい」
「お休みなさい」
浴室にクロスツェルさんを置いて二階に上がると、廊下でベゼドラさんがじっと私の自室を見てた。
……何なんだ?
「私の部屋に何か?」
「白金の髪と薄い緑色の目を持つ女に心当たりはあるか?」
白金の髪? さっきの女性か?
いや……
「薄い緑色の目には会ってませんね」
「本当に?」
「旅人に嘘を吐いても楽しくはないです」
でも多分、関係者だな。金髪はごろごろ転がってるが、白金の髪なんてそうそう居るもんじゃない。
「……そうか」
不満を隠さず部屋に戻るベゼドラさんを見届け、自室に入って鍵を掛ける。今度は誰も現れない。
が、落ち着いて寝られる状況でもない。
「これ以上の怪奇現象は勘弁してください」
溜め息混じりに呟けば、沈黙が返事をしてくれた。
朝食を楽しみにベッドへ潜り込んで、無理矢理意識を沈める。
こういう時の対処法も教えて欲しかったです、師範。
誰かの泣き声で意識が浮上した。
目が覚めたのとは違う。夢だ。
随分と感覚がはっきりしてる夢だな。
周りは真っ暗で何も見えない。ただ、女性の泣き声が聞こえる。
「ごめん、なさい……ごめんなさい……」
切ない声色。か細い謝罪の言葉は誰に向けた物だろう?
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
「ま……り……に、……ひか……、てらせ」
繰り返し呟く女性の声に、小さな音が重なる。
音はどんどん大きくなって、聞き覚えのある旋律になった。
そして、中盤最後の言
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