語り継ぐもの 2
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つもの倍以上、美味しくなりそうだ。期待しよう。
夕食を残さず平らげて洗い物を済ませた後、二人を二階に案内した。
二階には自室の他に三つの部屋がある。一つは散らかった物置状態なので決して入らぬようにと警告しつつ、他の二部屋へそれぞれを招き入れた。
元々大家族が建てた物を中古で購入したので、一人暮らしにはちょっとした豪邸だ。こういう突然の来客にも対応できるのは利点だな。自室以外には必要最低限の家具しか置いてないし、中身は空っぽだから盗みも心配しなくて良い。
……多少埃っぽいかも知れないが、其処はご愛嬌と流してもらおう。
「準備しておきますから、入浴がご入り用でしたら一声下さい。浴室へ案内します」
「何から何まで、お世話になります」
「いいえ。ごゆっくりどうぞ」
律儀に頭を下げるクロスツェルさんをそこそこ広い個人部屋に残して、一階へ降りる。
調理場の奥に在る浴室で浴槽を洗い、半分より上程度に湯を張った。一杯にすると流れてしまうから勿体無いのだ。いついかなる時も質素倹約を忘れてはならない。
その代わり、体を洗浄する為の湯は専用の大きめな甕になみなみと用意しておく。
濡れた手足をタオルで拭き取り、浴室を出て二階へ戻る。
明日からの予定を話してるのか。別々に通した筈の二人の声がクロスツェルさんの部屋から聞こえる。ちょっと聞き耳を立ててみたい気もするが、それは礼儀に欠ける行いだ。恥ずべき衝動を抑えて自室に向かう。
外からも内からも鍵を掛けられる便利な扉を開いて入り、後ろ手に閉めた。問題無いとは思うが一応……と、扉に向き直って鍵を掛けて……背後に気配を感じた。
「!?」
勢いよく振り向いた先に、髪の長い女性が俯いて立ってる。入った時は誰も居なかったのに。
「……誰?」
驚きで爆発しそうな心臓を抑えながら不審者に身構えると、女性は白金の緩やかな髪を揺らして顔を上げ、水色の目で部屋の奥にある机を見た。
……水色?
「……宝石の、関係者?」
あの石と同じ澄んだ水色。それだけで判断するのは早計なのだろうが、勘がそう告げてる。
これは自慢だが、私の勘は滅多に外れない。武芸の師範がとても優秀だったから。
気配を読む力と人を見る目は、師範が育ててくれた数少ない長所だ。
女性は袖が無い真っ白なワンピースの裾をふわりとなびかせ、素足でペタペタと……待て。足音はしてない。よく見ると体も透けてないか? まさか、幽霊とかじゃないだろうな。
私に背を見せて机の前に立ち、引き出しをすぅ……と指して、そのまま持ち上げた腕を壁に向けた。
……違うな。
多分、壁の向こうの二人だ。
隣の部屋に居る二人を指してる。
「宝石を……二人に渡せと、言ってるんですか?」
指先を壁に向けたまま肩越し
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