暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
語り継ぐもの
[2/3]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
見ると真ん中に何かが埋まってるのだが、目を凝らしても正体は掴めない。石を持つ角度で消えたり現れたりする小さな点は、夜、暗い場所で覗くと微かに点滅する。とても不思議だ。
 この宝石は、つい先日川へ水を汲みに行った時に偶然拾った物。不透明な灰色の石の中で、キラリと光って存在を主張してた。
 装飾の形跡が見当たらず、誰かの落とし物……という訳でもなさそうだったので、なんとなく拾ってしまったのだが……何故か、誰かを待ってる……そんな気がする。根拠は無い。本当にただそう感じるだけだ。
 不思議な石を袋に戻して、再度引き出しにしまう。
 一階から鈴の音が響いた。玄関にぶら下げている呼び鈴の音だ。
 「はーい! 少々お待ちくださーい!」
 小走りに部屋を出て階段を下り、真っ直ぐ先に在る一枚扉を外側に開く。
 ベランダの真下に当たる空間に、真っ黒と真っ白、両極端な男性が二人並んで立っていた。
 「こんにちは。このような時間に突然、申し訳ありません。私達は旅の者なのですが、たった今此方の村に着いたばかりで右も左も判らず困っています。よろしければ、村に宿泊所が在るかどうかだけ教えていただけないでしょうか? 無ければ無いで次の村へ急がなくてはいけませんので」
 村の隅の家を選んで尋ねてみたらしい。礼儀正しい真っ白な男性が、穏やかな微笑みで私を見下ろした。
 「宿泊所は無いです。ですが、これから東西南北どちらへ向かうにしても、村は当分在りませんよ。街なら在りますけど。一泊で良かったらウチに泊まりますか? 勿論、お代とかは要りませんので」
 扉を全開にして、入りますか? と手で示してみる。
 「……とてもありがたいお申し出で、正直助かりますが……貴女はお一人暮らしではありませんか? 見ず知らずの怪しい男二人を引き入れるのは不用心でしょう」
 玄関の内側を見て判断したようだ。
 確かに私は一人暮らしで、普通なら余所者を招き入れたりしない。
 普通なら。
 「合格です。失礼ながら、反応を試させていただきました。此処で喜んでズカズカと押し入る相手なら、蹴りを入れてお引き取り願うつもりでした」
 幼い頃から少々武芸を噛んでる身だ。相手を見る目にはちょっと自信がある。この二人は問題無い。
 ……黒い方は微妙な気もするが。
 「……なるほど。女性に対して逞しいと思うのは失礼でしょうか」
 「いえ。純粋な評価として嬉しいですよ。どうぞ。何もありませんけど」
 一旦外に出て二人の背後に回ると、白い男性が一瞬戸惑って
 「ありがとうございます。お世話になります」
 頭を下げた。
 貴方もお礼を言いなさいと黒い方に説教してるのを見る限り、白い男性を抑えておけば黒い方も問題無さそうだ。
 旅人にあまり良い印象は無かったのだが、珍しいタイプだな。
 「これ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ