柏木提督ノ章
五文字の伝言
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は砲撃を放ったのだ。それは私の胴体を二分にはしなかったものの致命傷は与えてくれた。砲撃を食らった左脇腹は私が見てももうどうしようもなかった。
「もう駄目か」
我が従兄弟は何も口に出さなかった。そう、もう終わりなのだ。彼が何をしようがもう私は死ぬ。本当に、これは致命的だ。
「介錯を、それで」
九九式にはまだ弾が一発残っていたはずだ。彼はそれを拾い上げ、装填作業をする。ゆっくりと操作し、確かに弾が装填されたのを見てから彼は言った。
「遺言は」
私は少し悩んだ。私は艦娘の被害を少なくするために、そうしてただ後方で待つのが嫌だったから提督になった。それが本当に艦娘達の役に立ったのかは甚だ怪しい。
けれど、それでも一人の提督として、一人の人類として、彼女達に伝えたい言葉があるとすれば。
「ありがとう、と」
その五文字を。闘いぬいた彼女達に感謝を。
「ええ。伝えます」
「頼んだぞ、あれを」
それは伝言とは違う願い。私が出来た数少ない事の継承を彼に託す。
「ええ……それでは」
私は一度空を仰いだ。空には月が上っている。そうして私は目を閉じる。微かな波の音を聞きながら、私は小さく笑みを零した。
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