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珠瀬鎮守府
柏木提督ノ章
五文字の伝言
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であろう。
「島風殿、速く!」
 湾内の深海棲鬼は一斉射を警備課がいる方向へ放つ。辺が吹き飛ぶ、が。
「警備隊のお兄さん達!」
「無事です島風殿。さぁ対岸を、提督殿の元へと!」
 警備隊は最初の射撃を僅かな人員で済ませた後、すぐさま移動を開始していた。対深海棲鬼戦闘術の一つだ。
「提督が見えた」
 私の視界の中の島風が大きくなっていくと共に、其れに気づいた。異音だ。慣れ親しんだ音に隠れた違和感。音の正体は、音が鳴る原因は一つしかない。
「提督ぅ!」
 凄まじい速度で突っ込んでくる島風。減速を期待するがその素振を見せぬまま彼女は私へ直撃した。
「どりゃー」
 腹部に叩きこまれた島風の頭部は私の腹部に強かに叩きこまれ、私は肺の中の空気を抜けれた。一応は彼女を出迎える為に構えた体も彼女に吹き飛ばされ後ろへと流れる。だが、倒れながらも彼女を何とか抱きかかえる。
「つっ!」
 背中を地面へ打ち付けたが、勢いがなくなるまで何とか島風を離さなかった。
「ごめん提督、痛かった?」
 私は島風の質問に直ぐに答えずに、島風を私の体の上からどかしながら未だ唸りを上げ続ける発動機付きの靴を脱がせて湾内へとぶん投げた。
「ほぇ?」
「安心しろ、全然痛くなかった」
 投げられた発動機は海に着水して暫くしてから爆発した。そしてそれに連なるように、湾内入り口で二つ大きな水柱が立った。
「うわー」
 惚ける島風を脇に抱えて、私は深海棲鬼から見えない位置へと駆ける。何とか内地へと向かう道へ彼女を運び、下ろした。ついでとばかりに私も靴と靴下を脱ぐ。
「提督?」
「逃げろ島風。大分大きいがこの靴で我慢しろ。この先に避難した非戦闘員がいる」
 島風に靴を渡し、靴下は近くの茂みへと投げ込んだ。私が生きていれば、後日回収しよう。
「提督は?」
「警備隊の指揮を執る」
「危険じゃない?」
 背筋が粟立った。島風の顔を見るが、彼女の顔にこれといった他意は浮かんでいない。ついさっき、一撃を貰えば即死という砲火の中を駆け抜けた彼女が、戦闘区域に入るだけの私を気遣ったのだ。
 其れがどれ程悲しいことか。こんな、年端もいかなぬ少女にそんな言葉を言わせるのか。
「ああ。けど、皆一緒だ」
 今日私は初めて彼女達と、英雄たちと同じ土俵に立つ。死が隣り合わせの戦闘区域に立てる。提督という立場から言うのはおかしいが、ほんの少し、誇らしい。
「だから、任せとけ」
「うん、分かった。皆のこと宜しくね」
 そう言って、ぶかぶかの靴を履いて島風は駆けて行った。


「敵艦載機は見当たりません。艦娘一同の奮闘の賜物です。ですが予備機の存在は否定できません」
 島風を見送った後湾の先端へ駆け戻り、九九式と無線機を回収し警備隊と連絡を取っていた。
「重巡洋艦は先程
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