第1章 光をもとめて
第6話 リーザスの少女達とコロシアム開催
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気合が入ってしまったようだった。その気合はいつもより何割か増しで攻撃に転じてしまってて、速度も増している。普通の人間なら見る事は勿論、影すら捉えられない程の速度。観客もさっきまでの興奮の渦だったのが、不自然な静寂に包まれている。
だが、それは一瞬だった。
『うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!』
一気に静寂は消え去り、本日最大の歓声に包まれていた。
「これは凄いです〜〜!! ユーリ選手の勝利です〜! いやー、今のは見えませんでしたね〜!カレンさん?」
「そうですね。これ程の速度の攻撃を見るのは………。いえ、なんでもありません。こちらの話で……」
実況がちゃんとしてなくてどーする!と、突っ込みたくなるが、あの速度の域は過去で見たのはあの将軍の剣撃くらいだ。
……否、判らない。
遠目のこの位置からでも残像を追えた程度。どちらが、上なのか……そう考えたら。
(ここで、簡単に赤の将の名を出すわけには……。彼も冒険者だろうし、王国に注目させるのも、ちょっと可哀想だしね)
自国の最強である赤の将軍に匹敵するとなれば、王国が黙ってないだろう。そう考えたカレンの判断である。
良かったのかどうかは、判らないが 軍から内部へと入ろうと企てているユーリにとっては、名を出してくれた方が好都合……なのだが。そんな内事情をただのアナウンサーであるカレンが知るよしも無かった。
「ははは……。ま、たまにはこんなのも良いかもな。……顔は晒したくないが」
ユーリは、まだ冷めぬ声援に答える様に拳を軽く突き上げ、選手控え室へと帰っ ていった。
これはまだまだ序盤の一回戦。
まだまだトーナメントは始まったばかりだ。
(あの速度は……、辛うじて見る事は出来た。でも、対峙した時に回避出来るか? と言われればわからない。出来ない……なんて言いたくない)
ユランは、握る拳に更に力を加えながら考える。この嘗て無い緊迫感、これこそが自分の求めていたものはこれだったのだから。
「ふんっ! あの馬鹿め、変に情けをかけたのだな。なぜ、腹なんぞ狙っておるのだ。男なら ずばーーっと首だろうが!」
「!!!」
直ぐ傍で試合を観戦していたランスがデカイ声で野次を飛ばしていた。
そんなのは観客の声援でかき消され、本人に聞こえる筈はないが、その野次の内容にユランは再び戦慄が走った。この男、大した事ないと思っていたのだが、自分以上に正確にあの斬撃を見ていたのだ。
(……この男も、か。……ふふ)
自然と笑みがこぼれる。さっきあの男が言ったとおり。まだ、あの男とやるのは早い。
目の前の久方ぶりに見る≪強敵≫を倒してからだ
ユランはそう思うと、そのまま奥へと去っていった。
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