暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
書の守り人
[3/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
か居ない筈だ。玄関を見てもやはり閉じたまま。
 だが、男は目の前で悠々と日記を捲り、クス、と笑う。
 「有ろうが無かろうがどうでもいい内容だな。少々懐かしいが」
 懐かしい?
 首を傾げると、男は日記をテーブルの上に置いて再び自分の顔を覗き見た。
 瞳が怪しく光り、愉しそうに歪む。整った顔立ちが視界を占領して……
 「!?」
 唇が、塞がれている。気付いた時には長椅子に押し倒されていた。
 男の右手が頭を支えて、左手が腰を擦ってくる。吸い付いては離れてを繰り返す唇から戸惑い混じりの吐息が零れた。
 「……っやめて! 貴方、誰? なんのつもり!?」
 首筋に標的を変えた男の頭を押し退けようと両手でもがくが、びくともしない。腰を登った冷たい手のひらが厚手のシャツに潜り込んで、直接肌に触れる。
 「ついでの食事、かな?」
 「食……っ 私は食べ物じゃないわ! 離して! 出て行って!」
 「怖い?」
 男が額に額を押し付けて、静かに見下ろす。シャツの中を探っていた手が背中に回って、優しく抱き締められる。
 何故か嫌悪感が薄くなった。
 「離して……」
 声が震える。突然すぎて混乱した頭の奥が、急速に静かになっていく。抵抗しなければと考える反面、男を抱き締めたいと思う。
 これは何? 自分に何が起きているのか。
 「セレイラ」
 額を外した男が頬に口付けて、名乗ってもいない名前を囁く。体が勝手にビクリと跳ねた。
 「良い子だ」
 甘い声が耳を撫でる。思考が衝動に支配されていく。
 上半身を起こして離れた男を追い、長椅子に座り直す。荒らされたシャツを自ら脱いで下着を外し、男の体にしがみ付いて唇を重ねた。
 「ん……っ はぁ」
 何をしているのかと慌てる自分が小さくなる。
 男に触れたい。触れられたいと、残る全ての衣も脱ぎ捨てた。
 他人になんて絶対見せたくないと思っていた素肌を、見ず知らずの男に晒け出してしまった。
 だが、羞恥は無い。
 ただ男に触れて欲しい。余す所無く愛して欲しい。
 「あっ んん……」
 男の足に右膝を乗せて肩に体重を預けると、男の右手が普段隠れている場所に滑り込んだ。初めて其処に感じる他人の指先を、もっと深くと自分の右手が導く。
 「は っ あぁあっ」
 二人の指先がバラバラに動いて下半身を刺激する。直ぐに濡れ始めた奥への入り口に男の人差し指がつぷりと侵入り、円を描いて腰を揺らした。繁みの奥にある小さな突起を爪の先で浅く弾く度に、男の指の形を内側に知覚する。
 「可愛いな、セレイラ」
 耳を蕩けさせる男の声で胸が締め付けられる。
 もっと名前を呼んで。もっと触って。
 「あ、あっ やぁ……っ! んっぁぁ……っ!!」
 内側を探る男の指が二本に増え、根元まで入った。
 押
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ