第2章 夜霧のラプソディ 2022/11
18話 死を描く狂気
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レイヤーには一切気付かれず、周辺のモンスターのヘイトを投擲物に集中させるという都合の良い状況を成立させる事が出来たわけだ。
加えて、霧に鎖された森という地形を利用すれば、枝伝いに移動することでプレイヤーの視界に入ることはない。アルゴさえ欺く《隠蔽》スキルのアシストも相俟って、位置的に死角である高所に居続ければ他のプレイヤーにはまず見つからない。モンスターで考慮すべき《フォレストエルヴン・ファルコナー》の操る鷹でさえ、ピニオラを捉えることは適わないだろう。
これらの絡繰を使って、引き寄せられたモンスターをプレイヤーと鉢合わせ、疑似的に召集スキルの再現を行いつつも自分は安全地帯からその一部始終を眺めていた、というのが事の真相だろう。かなりいやらしい手口だ。
「へぇ〜、マイナーなスキルだから分からないと思ってましたよぉ。でもぉ、そろそろお別れですねぇ」
茂みが揺れる音を聞き取り、ピニオラは大袈裟に周囲を見回すような仕草をして見せる。
「まさか、逃げようと思ってるのか?」
「そ〜ですよぉ。わたしだって死にたくないですしぃ、それに貴方だってわたしを殺せないでしょ〜? あの娘達と居るために手を汚したくないんですよねぇ?」
「………試してみるか?」
「無理だと思いますよぉ? だってぇ、これだけ時間をあげたのにちっとも攻めてこないんですものぉ〜。女の子にはもっと積極的に大胆にリードしてあげないと愛想尽かされちゃいますからぁ、気を付けてくださいねぇ?」
虚勢を張ったが、見透かされているか。レイジハウルの柄に手を掛けていても、抜くことが出来ない。プレイヤーを斬り付ければ、その削ったHPだけ相手を死に近づける。例え一人殺したPKだとしても、生きている者を殺してしまえば俺も同じくPKに成り下がる。そうなった自分を想像するだけで、背筋が凍る。せめて時間を稼いでいるうちに拘束する手段が思い浮かべばと思っていたが、どうも妙案とはなかなか出てくれるものではないらしい。
ただ睨み付けるだけで精一杯の俺に溜息を一つ零しながら、ピニオラはローブを翻して俺の横を通り過ぎようと歩を進める。
「では、もう時間もないんで失礼しま………ひぅ!?」
しかし、ピニオラはいきなり短い悲鳴をあげたかと思うと、右脚から崩れて倒れ込む。
突如としてPKの逃亡を食い止めた不可思議な現象は、右の太腿に刺さった矢が克明に物語っていた。しかし、ここはまだエルフの出現するようなエリアではない。本来ならば在り得ないのだが………
「動かないで下さい」
不意に響いた声の後、茂みが揺れ、黒い肌のNPCが姿を現す。
どこか鋭ささえ感じる冷酷な口調や、冷たい視線は俺の記憶では結びつかないものだが、アニールブレードを佩き、タ
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