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ダンジョンにSAO転生者の鍛冶師を求めるのは間違っているだろうか
独白
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いように個別に工房を与えている【ヘファイストス・ファミリア】の鍛冶師に限ってそれに触れることを訊いてこないはずだというのに、俺はホームに寄り付かなくなった。
 まるで怪しんでくれと言わんばかりだ。

 「それに、冒険者依頼なんて素材を届けに来るときぐらいにしか冒険者と顔を合わせないというにも(かか)わらず、ヒロキは冒険者が沢山いるダンジョンに自ら潜るっているじゃない。本末転倒もいいところね」

 ヘファイストス様は本当に可笑しそうな声音で言った。

 再び靄が胎動する。
 その靄が残り少なくなってきて、靄に隠れていた黒い固体があらわになった。
 その球体の周りを麦藁帽子のつばのように靄があった。

 無意識のうちに目を逸らしていた何かが形を成し始めているようだった。

 「………………つまり、俺は自分の異常性を隠すという建前に人を寄せ付けたくないという本音を隠していた、ということですか?」

 俺はわかりきったことを訊いた。

 「そうなのかもしれないわね」

 その俺に何も言わず、ヘファイストス様は肯定の言葉だけを告げた。

 「俺は………………目を逸らしているということですね」

 と言う終わるが早いか、頭の中の靄は球体に完全に呑まれて、ぽつんと漆黒の球体が残った。
 それは見るからに堅く、何物も寄せ付けないような雰囲気を放っていた。

 「それと、突然だけど、隠し事を明かすと、私はあなた夢にうなされているのを聞いたことあるのよ」
 「……えっ?」

 唐突な暴露に呆然として、意識を完全に現実に引き擦り戻されてしまった。

 「あれは、ヒロキがまだホームにいた時の夜…………いや、ホームに寄り付かなくなった日の前夜だったわね。お忍びであなたの部屋に行ったのよ。正体が気になってしょうがなかったのよ」

 まるでその時のことを昨夜のことのように語るヘファイストス様の瞳は星をちりばめたように煌めいていた。

 その目から視線を少し落とすと、視界に黒極の球体が現れた。
 その球体には俺の知らぬ間に微かなひびが走っていた。

 「だけど、訊けなかったわ。何でだと思う?」

 その球体から目を離し、主神の顔を見ていた俺にヘファイストス様が煌めきの消えた目で問うた。
 何故わざわざ俺に問うたのかわからなかった。

 「さあ、どうしてなんですか?うなされていたからですか?」
 「違うわ…………正解は、私がノブに手をかけようとした時にヒロキの叫び声が聞こえたからよ」
 「…………叫び声…………」

 俺はヘファイストス様の口にした言葉に昨日のことを思い出すとともに、(おぼろ)げにあの日のことを思い出していた。
 俺はあの夜、本能かまた別の何かに急き立てられるように飛び起きたの
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