魔窟の森 3
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じ顔。だが、髪の長さがあまりにも違う。祠の中が体と髪でぎゅうぎゅう詰めになっている。その内、髪に体が追い出されるのではないか? と思うほど長い。手入れなどは確実にしていないだろう。
「……人間。此方へ」
長がクロスツェルに手を伸ばした。一瞬驚いたネールが姿勢を崩しそうになるが、直ぐに正す。その横をすり抜けて長の手を取り、片膝を突く。
暫くの沈黙の後、長は静かに目蓋を持ち上げ……虹色に輝く虹彩で、首を傾げるクロスツェルを見据えた。
「語る必要は無いよ、クロスツェル。貴方の記憶は世界樹が読んだ」
「え?」
「貴方はアリアに救われたのだね。証こそ無いが、アリアの力は確かに一族の物。彼女に救われた貴方から力を感じるのは当然だ」
「……記憶を読めるのでしたら何故、ベゼドラを里に招いていただけたのでしょう?」
クロスツェルは、ベゼドラが居ないと説明が難しいと言って押し切った。
説明を必要としないなら、連れて来る理由も無い筈だ。
「貴方の言う通り、避けられる争いならば避けるべきだと思ったからだよ。僕達は神々に仕える民ではあるけれど、それ以前に創造神の作り物。悪魔もまた然り。ならば、害意無き者に敵意を示すは真の愚かだ」
どうやらネールの記憶を読んで説教を聴いたらしい。
長はにこっと可愛らしく微笑んで、クロスツェルから手を離した。そのまま人差し指を二人の間に立てる。
「貴方にこれを授けよう、クロスツェル。きっと貴方達の旅に必要な物だ」
しゃらしゃらと軽やかな音を引き連れて、虹色の輝きが長の指先に丸く集まっていく。拳程度に大きくなった輝きは、クロスツェルに傾けた指先を伝って彼の胸にすーっと溶けて消えた。
「これは……?」
長い髪を器用に逆立てて驚きを表現しているネールと、ちょっとびっくりしているベゼドラの気配を背中で感じながら、クロスツェルは自分の胸に手を当ててみる。特に変化は無い。
「アリアの力に敵う物だよ。使い方は自然と理解できる。僕達が代々護ってきた宝物だから、大事にしてね」
「何故私に、そんな大切な物を?」
腕を下ろした長は目蓋を閉じ、口元だけで弧を描いた。
「アリアの傍に居る男を止められるのは、現代この世界にはアリアしかいない。そのアリアを僕達側に引き留められるのは、貴方達だけだと思うから。特にクロスツェル。貴方は彼女にとって重要な立ち位置に在る。まさしく「アリアの鍵」だ」
「!」
ベゼドラの目が丸くなる。
記憶を読んだと言っていた。つまり長は、クロスツェルを通して魔王と呼ばれた悪魔の再来を知った。世界を脅かす者の再来を。
だから、対峙する為の物をクロスツェルに与えたのか。
「世界を救えとか言うなよ、白蟻。俺達はロザリアを取り戻せればそれで良いんだ。他の奴らな
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