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黒魔術師松本沙耶香  人形篇
12部分:第十二章
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目なのでしょうか」
「私の自宅ならばよいのですが」
「けれど今日は」 
 絵里は言った。
「私当直でして」
「そうだったのですか」
「はい。けれどそれなら仕方ありませんね」
「ここの当直室はどちらにあるのでしょうか」
「教会の後ろです」
 彼女は答えた。
「そこにあります」
「そうなのですか」
「若し宜しければ御一緒にと思ったのですが」
「申し訳ありません。教会ではね」
 沙耶香は一時気が向いたようであったが教会と聞いてその気をなくしたようであった。
「幾ら何でも神の御前で、というわけにはいかないでしょう」
「けれど」
「私がよくても貴女が」
 沙耶香は言った。
「流石にその罪は償いきれないのではないですか?」
 それは神への冒涜に他ならない。女と交わることですら罪だというのに。その罪に誘うのは他ならぬ沙耶香であるが彼女はここではそれを否定してきた。
「どうなのでしょうか」
「はい」
 そして絵里もそれを認めた。こくりと頷く。
「その通りです」
「では止めますか」
「いえ、待って下さい」
「何か」
 沙耶香は急に声をあげた絵里を見て目の中だけで笑った。目そのものは微動だにせず、何も変わってはいなかったがその中にある黒い瞳が笑っていた。まるで獲物を前にした虎の様に。確かに笑っていた。
「それでも。いらしてくれませんか」
「宜しいのですね」
「・・・・・・はい」
 震えながらもこくりと頷いた。罪深いことであるのはわかっている。それを冒すことが恐ろしい。だがそれ以上にその罪を冒すことと沙耶香のもたらすであろう快楽への誘惑に耐えられなくなっていたのであった。だからこそ頷いたのである。
「是非いらして下さい」
「わかりました。それでは」
 二人は教会に向かった。そして神と主、聖霊のいるその場所でまた罪深い夜を過ごすのであった。



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