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逆さの砂時計
魔窟の森 2
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った。
 どちらも自尊心が高いのに、だ。

 創造神を知らないと言っていたベゼドラを判断材料にするのは、少し弱い気もするが。
 神と一緒にするな、悪魔と一緒にするなといった類いのセリフが双方から出てこないのは、互いにそういう認識があったからだろう。

 神も悪魔も、創造神と呼ばれる者が作った。
 そんな存在が動いていたら……神や人間に肩入れしていたら。
 排除される悪魔側は、今頃跡形もなく消えていた筈。
 魔王に対する情があって、異空間へ飛ばすだけに抑えたとしても。
 それなら、現代この世界に再び魔王が現れるとは思えない。
 また同じ結果になると解っていて、放置するだろうか?

 などと考えてみても。
 実際のところ、クロスツェルには創造神の考えなど理解できないし。
 正直どうでもいい。
 ただ、ロザリアを捜す邪魔だけはされたくなかった。

 アリアを追いかけるには、ベゼドラが必要だ。体力的に。
 こんな所で別行動するわけにはいかなかった。

 前へと進む為なら、どんな思想も現実も利用する。
 それだけのこと。

 神は、神は、と騒ぐリーシェに対して「ああ、うるせえー」と耳を塞いだベゼドラと目が合った。
 口角を上げて目を細める彼に、クロスツェルは、にこっと微笑む。

「……来い、人間と悪魔よ」

 ザンッ! と、ネールが突然、木の上から目の前に降ってきた。

「早いな」
「専用の近道がある。案内するから、付いて来い」

 長の決定だからか、他のエルフ達は文句も言わず、五人ずつに別れ。
 ベゼドラとクロスツェルをそれぞれ取り囲んだ。

「木の上なら、コイツには無理だぞ」

 親指でクロスツェルを指すベゼドラを、ネールは鼻で笑う。

「人間の脆弱さはよく知っている。故に我らは、侵入者すべてを迷わせて、始末してきたのだ」
「『始末』?」
「侵入者共は、獣に肉を喰われるか干からびるかして、皆死んだ。神聖なるこの地の一部になれたのだ。光栄に思うが良いさ」

 自然に迷い、自然に死に、自然に還る。
 生物にとって最も基本的な()(さま)ではあるけれど。
 それは、エルフ達によって不自然にねじ曲げられた人生達。
 好奇心で身を滅ぼした、と言えば、それまでなのだが。

「そのわりには、野良魂が見当たらないな」
「長の元へ行けば分かる」

 本当は悪魔なんぞ入れたくはないのだがな、と、目つきで愚痴るネール。
 嫌悪感を隠そうともしないエルフ達に苦笑いを浮かべながら。
 二人は森の最奥へと連れ込まれていった。


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