魔窟の森 2
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やれやれと膝を払いながら立ち上がるクロスツェルに、ベゼドラが苦笑する。
「今度は創造神信仰か?」
「まさか。私はこの旅の合間にいろんな物事を見聞きしましたが、今並べた内容が真実ならどんな信仰も全力でお断りします。誰が殺されても意味が有るとか無いとか……それこそ生命に対する不遜と言うものでしょう。神はきっと完全ではないし、人間も悪魔も不完全。ですがそれは良い事でも悪い事でもない。ただそれだけの事なのでしょう」
ヒューッと口笛を吹いて笑うベゼドラに、エルフ達は意味が解らないという顔をした。
「お主達の言う事はさっぱり理解できぬ。創造神様が人間に罰を下さないのは、今は療養中であられるからじゃろうが」
「そりゃまた随分長い休みだな」
「当たり前じゃ! 創造神様は神々をお護りになって力を使い果たされた。そうまでしてこの世界を救おうとされたと言うのに、お主らときたら!」
「俺は勇者一行を知ってるが、創造神なんぞ関わってなかったぞ?」
「な、なに!? 莫迦な!」
リーシェが目を丸々として驚く。いちいち反応が大きい子だなぁとクロスツェルは和む。
「う、うううそを申すでないっ! 我らの里にはちゃんと口伝が……」
ガクガクと全身を震わせるリーシェを仲間が「そうだよ嘘だよ! アイツ悪魔だもん!」「騙されちゃ駄目だよ!」と言って励ましているが、クロスツェルは、多分本当に関わってなかったのだろうと頭の中だけで思う。
クロスツェルは悪魔も創造神の造物と仮定して説教したが、ベゼドラもネールと呼ばれたエルフも、その点に異議を唱えなかった。どちらも自尊心が高いのに、だ。ベゼドラを判断材料にするのは少し弱い気もするが、神と一緒にするな、悪魔と一緒にするなといった類いの台詞が双方から出ないのは、互いにそういう認識があったからだろう。
創造神は神も悪魔も造った。
そんな存在が動いていたら……神や人間に肩入れしていたら。
排除される悪魔側は跡形も無く消えている筈。
魔王に対する情があって異空間へ飛ばすだけに抑えたとしても、それなら現代この世界に彼が現れるとは思えない。また同じ事になると解っていて放置するだろうか?
などと考えていても、実際クロスツェルには創造神の考えなど理解できないし、正直どうでもいい。
ただ、ロザリアを捜す邪魔だけはされたくなかった。
アリアを追うにはベゼドラが必要だ。体力的に。こんな所で別行動する訳にはいかなかった。
進む為なら、どんな思想も現実も利用する。
それだけの事。
神は、神は、と騒ぐリーシェに対して、ああ煩ぇーと耳を塞ぐベゼドラと目が合った。
口角を上げて目を細める彼に、にこっと微笑む。
「……来い、人間と悪魔よ」
ザンッ! と、ネールが突然降って来た。
「早いな」
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