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逆さの砂時計
魔窟の森 2
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の全員が、口を開いてポカンとしている。
 「神々は既にこの世界に存在しないと言う。では何故、去り際に悪魔を滅ぼさなかったのでしょう? 神々の被害も大きかったとは聞きましたが、人間に代理で魔王退治をさせたのが創造神の意向であるとするならば、我が身を顧みずその意を汲んだ神々が悪魔に対して何もしなかったのは、まさにどうでもよかったからかも知れませんよね? 実際にどうにかしたのは、貴方達の言う紛い物ですし。紛い物に封印されちゃう程度ですし」
 「おいコラ。何気にバカにしてんだろお前」
 ベゼドラが青筋を立てても、クロスツェルは素知らぬ振りで言葉を並べる。
 「私の首を落とすのは結構ですが、そうするとベゼドラが面倒臭いと言いながら森を破壊すると思います。それはもう、全力で八つ当たりますよ。なにせ腐る物が大っ嫌いですから。微力ではありますが、私自身もそれなりに抵抗します。しかし、神々の頂点に立つ御方が、いがみ合おうが手を取り合おうが気にしないとの仰せなのですから、無駄な争いは止めませんか? 嫌悪と自尊心を尊重したって、徒労に終わるだけですよ。私を殺して仮にベゼドラを祓っても、貴方達には何の誉れもありませんし。聖なる地を下等生物の血で無駄に汚したくはないでしょう?」
 にっこりとアーチを描く両目に、ベゼドラと話していたエルフが苦い顔をする。
 「……よく回る舌だな、人間」
 「少し前までは此方が本業でしたので」
 言ってる内容は女神アリア信仰当時とだいぶズレてるけどな。と、ベゼドラはげんなりしていた。
 「だが、我らは誉れの為に侵入者を殺しているのではない。ただ聖地を護っているだけだ。人間は一人でも例外を許せば総じてつけ上がる。この森は不可侵を保たなければならないのだ」
 「そうですか……ですが貴方は先程、長に会わせる、私は放置できない、と言っていましたね。ああだこうだと言いましたが、実の所、貴方は私をどうにもできないのではありませんか? 首を落とすというのもハッタリですよね」
 「!」
 クロスツェルを囲むエルフ達に緊張が走る。
 「……何故そう思う?」
 「私が、一族の力? を帯びているから……ですかね? 私はただの人間ですが、それ故にこの力が何なのかを知りたいのではないかと。どうでしょう? ベゼドラも一緒に長さまに会わせてくだされば、仔細をお話しできますが。と言うより、一緒でないと説明が難しいのです」
 エルフが眉を寄せて、溜め息混じりにクロスツェルに振り向く。
 「長に判断を仰ぐ。(しばら)く此処で待っていろ」
 「え!? この悪魔は追い出さないのか、ネール!?」
 「訊くまでもないって!」
 ざわつくエルフ達を置き去りにして、ネールと呼ばれたエルフは軽々と木に飛び乗り、ぴょんぴょんと枝を渡ってあっという間に姿を消した。

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