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真・恋姫無双〜中華に響く熱き歌
第16話 馬中の赤兎、そして天使の声
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これで終わりよ!)
そう確信して賈?だが、赤兎は脚を緩めることは無い。
まるで、風のように走り続ける。
(左右のどちらかに逃げる気配は無し、それとも、自慢の巨体で無理矢理抜けるつもり?
まあ、どちらにしても網で捕まえるけどね。)
だが、その予想はどちらも外れていた。
跳んだ。
そう、跳んだのだ。
赤兎は槍兵の3、4メートルほど手前から跳び、槍兵の頭上を跳び越え、後ろに控えていた投網部隊の何人かの頭も跳び越えた。
それを見た賈?を含めた全軍は驚愕に満ちた。
こんなやり方で、罠を越えるなんて。
并州の兵は馬というものを良く知っている。
涼州などの良馬の産出地で産まれ、北方の五湖と戦い、理解している。
だが、この馬は、この馬は違う。
今まで自分たちが見てきたどの馬とも違う。

ただそう思うしかできなかった。

「なんなのよ、あれ・・・」
賈?は戦慄していた。
自分の考えたあの罠をあんな方法で越えるなんて。
賈?は以前赤兎を捕まえようとした時、赤兎の以上性を見てきた。
并州のどの馬でも足元に及ばない脚の速さ、罠を見破る知性。
どれも見て知っていた。
知っていた、はずだった。
赤兎に対しての策はそんなに多くない。
後ろから追いたてて罠にかけようとしても、追いつくどころか引き離される。
落とし穴やひもを脚元に張っても見破られる。
だから赤兎に対しての策はこの単純な策しか思いつかなかった。
いや、他にもいろいろ考えついたが、ことごとく通じないだろうと思った。
それほど以上な存在なのだ、あの馬は。
そして目線の先の赤兎は少し離れた小高い丘に向かう。
そしてこちらを振り向き、賈?と兵たちを一瞥した後、もう興味が無いとでも言うように前を向き、地面に生える草を食べる。



その頃、赤兎のいる近くの小高い丘にて、
「やってくれるじゃねえか・・・」
バサラが呟く。
「やってくれるじゃねえか・・・」
再度呟く。
バサラは并州の軍が赤兎を捕らえようとしていたのを見ていた。
それを赤兎が越えたのも。
それを見ていたバサラは、震えていた。
恐怖からではなく、歓喜の感情だ。
それはかつて、宇宙を遊泳するクジラの群れの長の白いクジラが攻撃を受け、びくともしなかったのを見た時に似ている。
それほどの衝撃をあの赤い馬から感じた。
この思いをあいつにぶつけて、伝えたい。
そう思った。
なら、やることは決まっている。
「やってくれるじゃねえか!赤兎!」
そう叫びながら、赤兎に向かって走る。

バサラに気づいた赤兎はバサラをただ見つめていた。
バサラに敵意は無いのを感じたのか、ただ見つめている。
バサラが赤兎の前に立つ。
「いくぜ、赤兎!おれの歌を聴けええええ!
ANGEL VOICE!!」
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