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鐘を鳴らす者が二人いるのは間違っているだろうか
26.迷子のアニエス
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 ティズは今、悩んでいた。

 これからティズは、村の復興をしながらもう一つの問題を処理しなければならない。
 それは、『冒険者としてダンジョンに潜り、他のファミリアに先んじて根源結晶を発見する』というもの。実はこれ、割と不可能に近いことを言っている。
 というのもダンジョンは大昔からずっとファミリア達が攻略に挑んでいた訳で、当然その先人たちは素人冒険者の考えも及ばないほど深い階層までゆっくり時間をかけて攻略している。にもかかわらず根源結晶が発見されたという話は一切聞かない。

 つまり、根源結晶は現在の最深攻略階層より更に地下深くか、もしくは今までの冒険者さえも見逃しているような隠された場所に存在することになる。一生かかってもダンジョン最前線までたどり着けないような冒険者が9割以上を占めるこの世界で、齢16歳のティズはそんなものを自力で発見しなければいけないのだ。

 その時点でもかなり絶望的な挑戦だが、それでもティズは挑まない訳にはいかない。
 いや、最悪自力で見つけられなくてもいい。そこにアニエスさえ連れて行ければそれで事足りる。

 最大の問題は、冒険者になってダンジョンに挑むためには事実上どこかのファミリアにティズ自身が入らなければならないという事だ。恩恵(ファルナ)なしにダンジョンへ入るのはもとより無謀な行為。唯の人間でしかなく、アスタリスクの加護も受けていないティズにとってこの問題は現実的に外せない。それを踏まえたうえで、問題がある。

「僕がファミリアに入るとして……エイナさんから聞いた限りでは問題が二つ。僕の方の問題は三つ。問題山積だ……」

 まず一つ。ファミリアの(あるじ)たる神に、何の特別な力もない人間が認められるのは非常に難しいらしい。何せ相手は神だ。ロキは優しくしてくれたが、冒険者として雇ってもらえるかというと微妙な所だろう。有名どころのファミリアは高確率で門前払いされると考えて良い。

 二つ。どうしても冒険者としてギルドに入るとなると、オラリオ内でも落ちぶれたファミリアに取り入ることになる。零細ファミリアは財政的に厳しく、満足に冒険も出来なくなって解散に陥るリスクが高い。折角入ったのに身動きが取れないのでは本末転倒だ。
 
 三つ。アニエスのこと。アニエスが冒険者になるにしろそうでないにしろ、行き場のない彼女を受け入れてくれる神でなければいけない。加えるなら彼女は敬虔なクリスタル正教の巫女なのだから、反結晶派との繋がりや偏見がない神でなければならない。

 四つ。アニエスと同じ理由でエアリーの事を受け入れてくれるファミリアでなければならない。彼女を受け入れてくれるとなると、もうティズには予測がつかない。自分なんか最初は魔物と見間違えたのだ。神がどんな反応を示すのか……既に怖い。
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