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黒魔術師松本沙耶香 妖女篇
9部分:第九章
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した笑みになった。
「もう一人は」
「貴方も来たのね」
 女もその声を聞いてうっすらと笑った。そして声がした己の後ろを振り向いた。沙耶香から見れば女と同じ方角で正面になった。そこに彼がいたのだ。
 青いスーツの上に白い裏地が赤のコートを羽織り赤いネクタイと黒い履を身に着けている。白い細面の流麗な顔をした長身の美男子であり切れ長の目がとりわけ美しい。薄い唇は引き締まり微笑みを浮かべている。
 髪は黒くそれで顔の左半分を隠している。その彼が白い朧な輝きを放つ満月を背にして夜の巴里の街に姿を現わしたのである。

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