虎と龍の思惑に
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視線を向けられて諸葛亮は苦笑を一つ。
「はい。ある意味、この戦はもう既に終わっています。相手の悪あがきがどのくらいの時間続くか、それだけです」
「しかし飛将軍は……」
「たった一人が精兵の壁を時間無しに突破出来るとお思いですか? 孫策さんを守ればこちらの勝ちなんですから……兵士の犠牲がどれだけでようと、それで私達の勝利です」
またばらける事も無く、飛将軍が揚州に潜伏し続ける事も無い。諸葛亮はそう言っているのだ。
孫呉ならばそれくらい出来るだろう。飛将軍さえいなければ警戒の幅はグッと下がる。だが何故、白蓮も諸葛亮も確信を以って飛将軍撤退を断言できる?
「……根拠の説明は?」
「……切片だけでも。敵軍師陳宮が潜伏していたのは荊州。現在戦に来ているのは荊州の兵士達。そして現在の荊州を一時的に掌握するに足る人物が劉備軍には居る。此れだけでどういう事か分かるはずです」
――そういう……ことか。
ニコリと微笑んだ諸葛亮の瞳の冷たさに寒気が走った。
「ほら、終わりでしょう? 敵が頼れる場所など、何処にもないんですから。
それに飛将軍単体を屠る術など幾重もありますよ? 武人の誇りを優先したいのなら別ですが、強すぎる化け物とは真っ向から戦わなくていい。人間というのはそうして虎を屠り、龍の怒りを鎮めてきたんですから」
この少女には何が見えている?
それとも私達の動きすら掌の上か?
疑い出せばきりがない。しかし……こいつを信頼しても、いいのか?
居辛い空気の中、慌ただしく駆けてくる兵士が居た。
汗も拭わないその姿に何事かと思った。
「どうした?」
「で、伝令! 周瑜様よりの指示をお伝えします!」
冥琳から? 広く周辺をも探っていたんだろう。これで私達の動きも確定させられる。
「劉備軍の助力、感謝する! 白馬義従は遊撃と攪乱! 孫権様は孫策隊本隊と合流後に後詰めと制圧を! 残りの兵は千ずつでばらけさせ敵離脱兵の殲滅とのこと!」
諸葛亮や白蓮の予想通りに、冥琳はこちらの動きを決めてきた。
最適解はそれらしい。なら、あとは私達が動くだけだ。
しかし……最後に兵士は苦悶の表情で言葉を続けた。
私にとっては、全く理解など出来ない言の葉を。
「……飛将軍は我らが主孫策が討ち取るべし! よって、戦場で一騎打ちに発展した場合は何が起ころうとも手出し無用也!」
吹き抜ける風が寂しげに頬を撫でた。
一際大きな雄叫びと銅鑼の音が鳴り、戦場の狂気がより一層増した気がした。
驚く皆の後ろで、一人の少女が微笑んでいた。
茫然と衝撃を受けたまま馬に跨る蓮華も、何をバカなと悪態をつく白蓮も、心配と不安
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