虎と龍の思惑に
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のに虎から学ばないといけないとは」
「足りないと気付けるだけお前達はマシなのです。堕ちた同朋達は、あれだけ無様に負けていても勝てると思っているでしょうからな」
「……何故、奴等はアレだけ不利なのに向かっていくのでしょうか?」
確かに数では有利だ。しかし結果は火を見るよりも明らか。殺した数に反して、積み上げられる味方の死体が多すぎる。
「村を襲い、街を襲い、奇襲で軍を襲い、そうして勝ち続けてきたから慢心や油断が出る。自分達は強いと錯覚し始める。ド素人の集団と何も変わらないのです。
あそこに武将の一人でも居れば少しは違うのですが、如何せん劉表軍には武将と呼べる程の才覚を持つモノは居ない。だから判断も下せず、勝ち過ぎで鈍った頭では劣勢の見極めも非常に困難になりますな」
「……肝に銘じておきます」
「しかし」
鋭く目を細めて言葉を区切ったねねは、じ……と一所を睨みつけた。
不思議そうに首を傾げた副隊長は、ねねの次の言葉をただ待った。
「このままでは面白くないのですよ。何よりあいつらにも想いがあった。そして我ら飛龍隊にも想いがある。こんなあっさり負けては何も為せない、変わらない。落とし前くらいは付けさせましょうぞ」
にやりと引き裂いた口は楽しげに。薄緑色の二房が笑うように揺れた。
「さて」
小さく頷けば、副隊長は胸を張る。誇らしげで、まるでねねが次に言う言葉を分かっているかのよう。
「お前達はどうしたいのですか」
「あなたに従います」
「なら……我らは飛龍であり悪龍。ふふ、すべき事など……決まっているのですよっ」
舌を出した。紅い舌が食したいのは何か、言わずとも知れている。
――此れも一興。お前の思惑に乗ってやるのです、諸葛亮。こいつらが強くなる為にも。
ばさりと上がる旗が丘の上、強い風にはためいて存在の証明を上げる。
「羽を広げよ飛龍隊! 我らは地に伏す竜に非ず! 虎を喰らいて天を舞う力と為せ! 孫策を……喰い殺すのです!」
銅鑼が鳴った。戦場に鳴り響く金属音は天まで響く程に高く気高く。
太鼓が鳴った。まるで鼓動を早めさせるように強く力強く。
「さあ、悪い事しようぜ、なのですよ!」
ぞろりと立ち上がった飛龍の群れが、翼のような旗を靡かせて声を上げた。
大きな、大きな声だった。虎も気を向けざるを得ない程の大きな声だった。
――お前はやっぱり最悪の軍師なのです、諸葛亮。
孫呉の怨みを全てねねと恋殿に集め、自分だけはのうのうと味方の振りをするつもりなのですから。
部隊長と同じ馬に乗りながら、最後列で赤兎馬に乗る彼女をチラと覗き見た。
何も言わず、何も意思を宿さず追随する彼女は人形だ。自分の言うことを聞くだけの。
チ
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