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乱世の確率事象改変
虎と龍の思惑に
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になるモノばかり。
 まだ足りない。ねねでは足りなかった部分があった。一手か、はたまた二手は遅れていただろう。
 この戦が終われば身を隠すつもりではいた。そこから劉備勢力の内部に居させている菜桜や藍々と秘密裏に連絡を取るつもりで居たのだ。
 しかし、諸葛亮はそれを繰り上げてきた。それも劉備が得をするカタチで、である。

――これではねねの使える手札が限定されてしまったのです。菜桜や藍々が劉備に心酔した可能性さえ出てきた。元から龍飛の意見に反発を見せていたのですから、ねねの手伝いをしてくれるとは考えにくい。

 幾日前に邂逅した少女を思い出して歯噛みする。
 まるで成長するまえの悪龍のような見た目の少女。灼眼と金髪が彼女と被って見えた。底冷えするような冷たさと、深淵を覗き込んだかのような昏い知性の光。
 アレは敵だと、ねねは理解している。

――諸葛亮はまず間違いなくねね達を駒として使い切るつもり。飛龍の最後の鉤爪として、覇王を殺す剣として。覇王さえ死ねばこの大陸での乱世は終わる……概ね、その通りなのが癪ですが。

 ち……と舌打ちを一つした。
 自分の予測でも、この乱世は覇王の敗北か勝利でした閉じ得ないと理解していた。否、覇王が死ななければこの乱世は終わらないのだ。ねねもそうするつもりだった。

――きっと劉備軍では諸葛亮だけが理解しているのです。覇王だけは殺さなければならないことを。そうしなければ、もう漢の再興など望めない。それほど覇王と黒き大徳の影響が出始めた。

 悪龍の最期の願い、そしてねねが守りたい約束の一つ。漢の再興という、どうしても成し遂げたい一つの目標がある。
 思い出の中に取り残された陽だまりの一時は帰って来ない。けれども、その時にあった国だけは滅ぼしたく無い。
 優しい微笑みを思い出して、ジクリと胸に痛みが走る。

 今はいい。小さく頭を振った。
 別に思考に向き始めた意識を戦場に向ける。
 現れた集団は兵力一万前後の軍。孫の旗が掲げられていることからも分かる通り虎の首魁が其処に居た。
 ほう、と感嘆のため息を一つ。軍師としての彼女は、その軍の精強さをしっかりと見抜く。

「……副隊長、アレが本物の軍なのですよ。我ら飛龍隊の完成系はアレに近い。頭が先頭で戦う、後ろで軍師が指揮をする、そしてお前達が手足や牙となって食い破る。
 孫策と周瑜の阿吽の呼吸が部隊全ての能力を段違いに引き上げ、周瑜が兵士達を操ることで孫策の命を守り切っているのです」

 見事だ、というしかない動き。一番多く集まった劉表軍の兵士集団の数は四倍に近いというのに、彼女達の方が戦場を操っているのだ。
 一つの動きも見逃すまいとしていた副隊長の男は、小さく呆れたような吐息を漏らした。

「皮肉ですな。我らは龍な
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