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黒魔術師松本沙耶香 妖女篇
32部分:第三十二章
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うするというのだった。
「それで本当に四日かけてね」
「回られるのですか」
「そのつもりよ。それでだけれど」
 速水に顔を向けてきた。右手に白いワインが入ったそのグラスを持ちながら。
「どうかしら」
「私を御供にというのですね」
「ええ、そうよ」
 まさにその通りだというのである。
「今はそうした気分だから。どうかしら」
「願ってもない申し出です」
 速水はまずは微笑んで彼女に言葉を返した。
「ですが」
「駄目だというのかしら」
「残念ながらです」
 心からそう思っているのがよくわかる返答だった。
「今日で日本に戻らないといけません」
「仕事なのね」
「はい、最初から決まっていました」
 だからだというのである。
「それは」
「そう。なら仕方ないわね」
 それを聞いて沙耶香もそれ以上は言わなかった。彼を気遣う様にして述べたのだった。
「それならね」
「またの機会ということで」
「ええ。またの機会にね」
 そしてこうも述べたのだった。
「一緒になりましょう」
「はい、それでは」
「それでですが」
 ここでまたモンテスが沙耶香に言葉をかけてきた。
「この屋敷に留まられるのですね。暫くは」
「ええ、そうよ」
 まさにそうするというのである。
「昼はここで夜はホテルでね」
「左様ですか」
「過ごさせてもらうわ。昼も夜も彼女達の相手をさせてもらうわ」
「またそれは」
 この沙耶香の言葉と考えに流石に閉口するしかないモンテスだった。ここでは同性愛というものの是非については話の外であった。
「何とも」
「それからルーブルよ」
 美女達との宴が終わってからだというのだった。
「巴里を後にするのは一週間程後かしら」
「そこまでは御自身のお金で、ですね」
「そのつもりよ。お金には困っていないから」
「報酬が尋常なものではないからですね」
「その通りよ。お金にはね」
 それについては何の不安もない沙耶香だった。速水もそうであるがこの仕事は危険が大きく表のものではないだけにそれだけに報酬も尋常なものではないからだ。それこそ一度の事件の解決で数千万の報酬を手にするのである。だから困ってはいないのである。
「何もね」
「では。それで」
「ええ。それじゃあ」
 右にいるその少女を見る沙耶香だった。
「貴女と」
「はい」
「それと」
 今度は左にいる彼女も見るのだった。
「貴女が。これからの私の相手よ」
「わかりました」
「それでは」
 少女達は顔を微かに赤らめさせて沙耶香の言葉に応えるのだった。それは恥ずかしさよりも宴を前にした悦び、それもまだ少女だが女としての悦びを期待する顔であった。
「御相手を務めさせて頂きます」
「是非共」
「そういうことでね。それじゃあ」

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