暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
魔窟の森 1
[5/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
に、()()の仲間達が怒りを表し始める。

 だから言葉は選びなさいと、常日頃から言っているのに。
 クロスツェルが内心で頭を抱えていると。
 その腕から、目を覚ました()()が勢いよく跳ね起きた。

「痛い! お主、いきなり何をするのじゃ! いわれなき暴力は、聖天女(せいてんにょ)の怒りを買うぞ!」

 自身に向けて突き出された()()の人差し指を。
 ベゼドラは鼻先で軽く笑い飛ばす。

「異空間に吹っ飛んで久しい奴が生きてて、このやりとりを直に見てたら、そうだったかもな?」
「聖天女は現代も生きておられるわ無礼者!! 彼の御方は貴き天神(てんじん)の一族でありゃしゃりぇりゅじょ!」
「リーシェ。噛んでる噛んでる」
「はぐ!? ……うぐぐぐぅ〜っ」

 口元を両手で押さえ、顔を真っ赤にして仲間達の背後へ回り込む()()

 ……なんだろう、ちょっと可愛いな。
 なんて、クロスツェルは微笑ましく思いつつ、立ち上がる。

「ベゼドラ。彼らは何者なのですか? 人間と違うのは、耳の形や肌の色で分かりますが」

 悪魔への問いかけに、耳長の彼らが息を吐いた。
 呆れ、嘆き、諦め。
 そんな感じの、深いため息。

「毎回そうだが……人間がここまで無知に成り下がっていると思い知ると、何の為に彼らが命を懸けてこの世界を護ったのか、分からなくなるな」

 ベゼドラと話していた相手が、クロスツェルと正面から向き合う。

「我らは、天神(てんじん)の次席を任された聖なる一族、エルフ。神々より遣わされし勇者一行が遺した聖地を、代々護り継いでいる者だ」
「天神? アリアとは違うのですか?」
「あの女は、紛い物だ」
「紛い物? アリアも女神なのでは」
不遜(ふそん)な。真の神々は既に、この世界には存在しない。神々は世界を離れ、神の血脈の半分を継ぐ天神(てんじん)の一族、最後の一柱であった聖天女もまた、勇者一行と共に異空間へ飛ばされてしまったのだから」
「……アリアは天に属する女神だと、ベゼドラに聞きましたが」

 ベゼドラに目を向けるが、彼も首を傾げた。
 ベゼドラも詳しくは知らないのだろうか。

「力は確かに一族の気配を感じさせた。だが、あの女は女神などではない。その証も持っていなかった」
「証?」
「神々の力の象徴。純白の翼だ」

 ベゼドラの目が丸くなる。

「あれ、全員に付いてるもんだったのか」
「…………ベゼドラ…………」

 神代に生きていた悪魔とは思えない一言に。
 クロスツェルを含めた、その場の全員が呆れ返る。

「ンなもんに興味なかったんだよ」

 よくよく考えてみれば、魔王を退けた英雄を知りなが
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ