魔窟の森 1
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夫ですか?」
クロスツェルが地面に膝を突き。
昏倒した何かの小さな体を抱えて、頬を軽く叩いてみる。
反応はない。
「……どうしましょうか?」
「丁重にお引き取り願え。木の上に居るお前ら、コイツを回収してとっとと塒へ帰れ! 俺達はただの通行人だ! お前らに用は無い!」
こちらは、ベゼドラの大声に応じてくれたのか。
複数の人影が一斉に降ってきて、二人と何かを取り囲んだ。
その数、十人。
何かと寸分違わぬ容姿の彼らに、クロスツェルは目を丸くした。
似ているなんてものじゃない。複製品を並べているようで現実味がない。
「お前、悪魔だな」
その中の一人がベゼドラに歩み寄り、鋭い目つきで睨み上げた。
「悪魔はすべて、あの女が駆除し、封印した筈だが」
相手を捉えたベゼドラの瞳が、すっ……と細くなる。
「ほう……? お前、生き残りか?」
「違う。私は母より記憶を受け継いだ。母は、その父より受け継いだ」
「……不老長寿のお前らが世代を重ねる程度には、時間が経ってるのか」
苦笑うベゼドラの横顔を、クロスツェルは不思議そうな目で見上げた。
一瞬垣間見えたのは、過ぎ去った時間への、哀愁……寂寥?
人間には想像も及ばないほど長い長い寿命を持っているらしい悪魔にも、そんな感傷的な思いを抱く時があるのだろうか。
「何故、悪魔が人間を連れている? 契約者か」
「似たようなものだ。お前らは、いまだに聖域守の真似事か?」
何かと同じ容姿の者達が、ベゼドラの言葉で険しい顔になる。
「勇者が遺した結界は、終末の刻が訪れるまで護らねばならない約束の地。人間や悪魔が汚して良い場所ではない!」
「アイツも人間だっただろうに」
勇者……魔王と一緒に異空間へ消え去ったという英雄か。
なにやら因縁ありげに話すベゼドラを、クロスツェルは黙って見守る。
「真の神々の洗礼と守護を受けた、唯一の救世主たる者達だ。恩恵を忘れた愚かな人間共と彼らを同一視するなど、言語道断!」
「はっ! なんだかんだ言って結局、お前らも人間と変わらないんだよな。自分達を護ってくれたから、感謝し、崇めてる。自分達にとって毒は元より薬にもならない雑草は、邪魔で邪魔で仕方ないわけだ。この世界にはお前ら以外にもいろんな事情を抱えた奴が居て、そいつらにしてみりゃ、お前らが雑草扱いする奴も掛け替えない至宝かも知れないってのに、なあ?」
肩を揺らして嘲笑うベゼドラ
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