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逆さの砂時計
魔窟の森
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払うクロスツェルに、何かはぽわんと目を蕩けさせ……
 「か、かっこいい…………っじゃなくて! お主ら今、我に幻惑の術を掛けおったな!? 卑怯者共め! だが、我ら誇り高きエルフにそのような品性の欠片も無い愚劣な技は通用しないものとしっ」
 「ウゼェ」
 「あ。」
 何かの頭に、ベゼドラの手刀がストンと落ちた。
 仰向けにパタっと倒れる何か。
 「暴力はいけませんよ、ベゼドラ」
 「臭い物と煩い物には蓋をしろ」
 「それで解決するなら、世界はもっと愚かしく平和だったでしょうね。……大丈夫ですか?」
 地面に膝を突き、昏倒した小さな体を抱えて頬を軽く叩いてみる。反応は無い。
 「……どうしましょう?」
 「丁重にお引き取り願え。お前ら! コイツを回収してとっとと塒へ帰れ! 俺達はただの通行人だ! お前らに用は無い!」
 ベゼドラの大声に反応した何かの仲間らしき影が、一斉に木々から降りて二人と何かを囲んだ。
 その数、十人。
 例外無く同じ容姿の彼らに、クロスツェルは少しだけ驚く。
 「お前、悪魔だな」
 その中の一人がベゼドラに歩み寄って、鋭い目付きで睨んだ。
 「悪魔は総てあの女が駆除し、封印した筈だが」
 ベゼドラの目がすっ……と細くなる。
 「ほお……お前、生き残りか?」
 「違う。私は母より記憶を継いだ。母はその父より継いだ」
 「不老長寿のお前らでも世代を重ねる程度には時間が経ってる訳か」
 苦笑するベゼドラに、クロスツェルは首を傾げた。
 「何故、悪魔が人間を連れている? 契約者か」
 「似たようなものだ。お前らはいまだに聖域守の真似事か?」
 何かと同じ容姿の者達が険しい顔になる。
 「勇者が遺した結界は、終末の刻が訪れるまで護らねばならない約束の地。人間や悪魔が汚して良い場所ではない!」
 「アイツも人間だったろうに」
 勇者。魔王を異空間に飛ばしたという英雄の事か。
 なにやら因縁ありげに話すベゼドラを、クロスツェルは黙って見守る。
 「正統なる神々の洗礼と守護を受けた唯一の救世主たる者達だ。恩恵を忘れた愚かなる人間と一緒にするなど、言語道断」
 「結局、お前らも人間と変わらないんだよな。自分達を護ってくれたから感謝し崇めてる。毒は元より薬にもならない雑草は、邪魔で邪魔で仕方ないわけだ」
 クスクスと肩を揺らして笑うベゼドラに、何かの仲間達が怒りを表し始める。
 だから言葉は選びなさいと言っているのに……内心で頭を抱えるクロスツェルの腕から、何かが目を覚ましてガバッと跳ね起きた。
 「痛い! お主、いきなり何をするのじゃ! 謂れなき暴力は聖天女の怒りを買うぞ!」
 ベゼドラに向けて再び突き出された人差し指を、彼は鼻先で笑う。
 「異空間に吹っ飛んで久しい奴が、生きてこの現場を
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