魔窟の森 1
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叫んだ、人間っぽい形をした何かが。
ひゅるる……べしゃ! と、二人の手前で、顔面から薄ら雪に墜落した。
山菜と思しき何らかの蔓と葉をモチーフにした独特な紋様の衣装。
素材は麻、だろうか? 見た目にゴワゴワしている。
それを身に着けている何かは、しばらくの間うつ伏せで痙攣し。
ムクッと起き上がって、二人を睨んだ。
「誰が傲慢と自尊心と陰険の塊じゃと!? この無礼な不法侵入者共が!!」
「いや、言い直さんで良いから」
「なっ、何を言うておるか!! 今、初めて口にした言葉であるぞ!? さてはお主、幻聴でも耳にしおったか! ふはははは、それも仕方あるまいな! 我ら上位種の聖なる気に当てられたのであろうよ!」
背筋をぴん! と伸ばして立ち上がった何かは。
人間とよく似た両腕を、人間とそっくりな胴体部分に当て。
人間みたいな両の素足を肩幅分開いて、人間に見える顔を少し上に向け。
人間と同じように高らかな声で笑った。
人間とは思えない、透き通るような白い頬が微妙に赤く染まり。
人間とは明らかに異なる細長い耳と、薄い金色の目が、腰上までまっすぐ伸びる純白の髪と一緒に、右へ左へと落ち着きなく泳いでいる。
「……ベゼドラ?」
クロスツェルは、何かしらご存知な様子だった悪魔に顔を向けてみるが。
ベゼドラは緊張を捨て去り、あさっての方向を見ていた。
「さて、そんな哀れなる下等な愚か者共よ! 身の程もわきまえず、我らの聖なる森に侵入したその罪。決して軽くはないぞ! 今すぐ我らと」
「お怪我はありませんか?」
二人に向けて突き出された、何かの左手の人差し指。
それを、微笑むクロスツェルが両手で柔らかく包み込んだ。
「薄ら雪が緩衝材になったとはいえ、痛かったでしょう? ああ、鼻の頭に少し傷が付いていますね。人間用でも傷薬があれば良かったのですが」
あどけない少女の顔に付いた雪や泥を、伸ばした指先で優しく払い落とすクロスツェル。
何かは、ぽわんと目をとろけさせた。
「か……かっこいい………… っじゃなくて! お主ら今、我に幻惑の術を掛けおったな!? 卑怯者共め! だが、誇りも誉れも高き我らにそのような品性の欠片も無い愚劣な技は通用しないものとし「ウゼェ」るぇっ」
「あ」
ベゼドラの手刀が、何かの前頭部にストンと落ちた。
仰向けでパタっと倒れる何か。
「暴力はいけませんよ、ベゼドラ」
「臭い物とうるさいものにはフタをしろ」
「そんな方法で万事が円満に解決するのなら、世界は今頃、もっと愚かしく平和になっていたでしょうね。……大丈
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