精神の奥底
46 恐怖、憎しみ、そして安息
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ない。
これではValkyrieを片付けても、街は元通りの犯罪発生率が全国トップレベルの犯罪都市へと逆戻りするだけ。
本音を言ってしまえば、復讐さえ果たせれば、ミヤやメリーなどの自分の手の届く範囲より外の苦しむ市民たちなどどうでもよかった。
だがもし助けられるなら、善人だけが助かって欲しい。
彩斗はそんなジレンマに唇を噛んだ。
「……皆が良い人なら、こんなこと聞かないんだろうな」
「そうですね…」
「そうえいば…何か僕に話したいことがあるんじゃない?」
「…やっぱり分かります?」
「そりゃあ…もう何年になるか…これでも君の兄さんだからね」
彩斗は本来の目的に切り替えた。
メリーは何か彩斗と話したいことがあるのだ。
本人は言わなくても、ハートレスですらもすぐに気づいたのだ。
その様子は明らかにいつもと違う。
だが正直、酷なことだと思った。
間違いなく、メリーにとっては嬉しい話題ではない、むしろ話すことを戸惑ってしまうくらい辛いことだろう。
だが言わずに抱え込めば、一生開放されることはない。
ミヤが現れる前の彩斗の時のように、打ち明けられない辛いことは心の中でまるで悪性の腫瘍のようにどんどん大きくなっていき、本人を苦しめる。
遂には身体にも異変を与える。
精神的なダメージは肉体にも現れるだけではなく、質の悪いことに治りにくい。
メリーにはそんな傷を負って欲しくなかった。
「……」
背中をタオルでこするメリーの手が震えているのが分かる。
背を向けている為、顔は見えないが間違いなく泣きそうになっている。
メリーの吐き出したいもの、それは恐怖だ。
深く考えずとも、10歳そこらの少女が2日も銃火器で武装した恐ろしい集団に捕らわれていたのだ。
むしろ目が覚めてから今まで必死に平静を装っていたことの方が奇跡的だった。
彩斗は振り返り、メリーの手を握る。
するとメリーは彩斗の胸に飛び込んだ。
「怖かった…怖かった!!」
「大丈夫、大丈夫だ。もう大丈夫だから…」
メリーは今まで堰き止めていたダムが決壊したように泣きだした。
「うぅ…暗い中、銃で脅されて…何度も殴られて…」
「ゴメンな…助けるのが遅くて…」
「目を閉じて耳を澄ますと聞こえてくるんです…「さっさと殺してやろうぜ」とか…「暇だからヤっちまおう」とか…」
「……」
「怖いんです…何もかもが…もし殺されてたら…もし犯されていたら…もしダークチップで闇に染まって…あなたを傷つけてしまっていたら…」
メリーは腕を彩斗の背に回してより身体を密着させる。
彩斗は全身にメリーの肌の柔らかい感触が広がっていった。
2人は不安な気持ちを抱えながらも、湧き上がってくる安心感に癒やされていく。
「…結局、最後までダークチップ
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