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黒魔術師松本沙耶香 妖女篇
30部分:第三十章
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かを出してきた。見ればそれはスミレの花である。一輪の黒に近い濃厚な紫のスミレの花を出してきたのである。
 それを前にかざすとだった。彼女の周りを無数のスミレの花達が覆った。そうして彼女はそのスミレの中に姿を消したのであった。
 しかしだった。声は残っていた。その声で二人に告げてきた。
「折角の美女達がね」
「けれど。またするつもりね」
 沙耶香は依子のその声に対して悠然と笑みを浮かべて彼女の言葉を返したのだった。
「美女達を集めて」
「そうよ。また気が向けばね」
 するというのである。
「そうさせてもらうわ。また何時か」
「そうなの」
「今は傷を癒して」
 それが今の彼女の考えだった。
「また会いましょう」
「ええ、それじゃあ」
「またの機会に」
 二人は旧友に対する様な声で彼女に応えた。スミレの花が全く消えたその時には気配も何もかも消えてしまっていた。後に残ったのは二人と美女達だけだった。

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