第13話 総司の敗北
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坂本龍馬の行動は早かった。化け物と化した旧友・岡田以蔵との遭遇によりまた攘夷の嵐が吹き荒れるのではないかという不安があった。
攘夷では時代は動かない事は脱藩したとき勝の弟子になったときから気づいていた。もはや、士農工商という身分階級などと言っている場合ではなく、全日本国民がフリーでなくてはならない。
(人斬りなんで時代は変わらんぜよ、武市さ)
武市半平太は生きている。しかも、以蔵同様、化け物と化してと龍馬は感じていた。だからこそ、龍馬は後藤と早急に会わなければと思い、中岡と共に九州へ飛んだ。
京の夜は鉄臭くどんよりと濁っているようだった。
(嫌な夜だな)
新撰組一番隊隊長・沖田総司はその空気をいち早く感じていた。あの池田屋事件の時もそうだった。
自分の剣を思う十分振るえるというワクワク感と肌にねっりと絡みつく死への恐怖感。
「沖田さん、あ、あれ・・・・・・・」
そんなことを思っていた矢先、隊員の一人が妙な男の姿を発見し指をさした。
その男は背中を向けてはいたが、上半身半裸であるにも関わらず、月の光で薄らと輝いているようにも見えた。
「おい、お前、そこで何をしている?」
沖田は大声でその男に声をかえた。
その男はゆっくりと前を向き出した。その目は猫のように金色に輝いていた。
「ハハハハ、新撰組ぃーーーーー」
男は新選組の艶やかな陣羽織を見るや狂笑したかと思うと体を丸めると、まるで針の玉のように猛スピードで新撰組へと転がり始めた。
「やるのか!!この野郎!!」
沖田の行動も早かった。その針の玉に向かって愛刀・安定を抜き走り出した。
ガキンという鈍い音が夜空に響いた。
針の玉の回転は止まったように見えた。
「やるな。だが、無駄な事だ」
針の玉の中から男の顔が現れ沖田に向かってにやりと笑った。と同時に回転の勢いがさらに増した。
(くぅ、これでは・・・・)
沖田は腰を落とし踏ん張って耐えていたが、すでに刀さえも限界を迎えようとしていた。
「化け物め」
沖田は体の力を抜き、力を流すように刀の向きを変えた。と同時に飛びよけた。
針の玉は沖田の横を通りすぎ、沖田と化け物との戦いを見つめていた隊員たちの輪の中へと突っ込んで行った。
「うわぁーー」
あっと言うに真っ二つになって死んで行くもの、うめき声をあげて動けなくなって行く者が地面に転がり阿鼻叫喚の世界へと変わっていた。
その玉はとどめを刺すかのように何度も何度も往来を繰り返した。
「沖田さん、逃げるぞ」
背中を地面にしたたかに打ち据えて動けなくなっていた沖田を生き残った隊員たちは抱きかかえ、その玉に見つからないように隠れ隠れて逃げだした。
(あの顔、見覚えがある。何度も見た。そう土佐の岡田以蔵)
沖田は唇をかんだ。
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