それゆけ! べぜどらくん。
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「お前が言うと冗談に聞こえるな」
「お黙りなさい実行犯」
ふわふわと頭を撫でられた少女は困った顔をして、でも、と呟いた。
「お金が要るの。リリンが病気なの」
「リリン?」
「リリンは、友達。ずっと一緒に、居たけど、今、すごい、熱で……、う、うごけ……ない、の……っ」
堪えていた涙をポロポロと溢し。
少女は、ふえぇええん、と声を上げて泣き出した。
「なるほど。お友達を助けようとしたのですね」
「リリン、死んじゃうっ! でも……、お金が、無い、からっ……。誰も、助けて、くれ……ないのぉお……っ!」
「そう。……辛いね」
クロスツェルは、わんわん泣き喚く少女の小さな体を抱きしめて、震える背中を優しくさすった。
助けてあげたいとは思うが、今現在、治療費を融通してあげられるだけの余裕なんて、旅人である二人にはない。
少女を買うなど、金銭面でも倫理の面でも論外だ。
何の気なく街を見渡せば、薄汚い物に対する目線が少女に集まっていた。
通りを往く人々は綺麗な装いで上品に笑い合い、下町の子供など見て見ぬフリで、充足した生活を謳歌している。
「放っとけ」
ベゼドラも、面倒くさそうに頭を掻いた。
「喰って良いってんならともかく、基本ガキは嫌いなんだよ。うるせぇし、ワガママだし、汚ぇし。第一、そいつ一人を助けてなんになるってんだ」
「ベゼドラ。言葉は選びなさい」
へいへい、と肩を持ち上げて横を向くベゼドラを見て。
ふと閃いた。
「働きましょうか」
「あ?」
「路銀を調達してください、ベゼドラ」
少女の肩に手を置いたまま立ち上がったクロスツェルが。
爽やかでありながらどこか胡散くさい笑顔で、ベゼドラと向かい合う。
「俺か!? これまで通り、全部お前がやれよ! 皿洗いとか介護補助とか、ぜってー断るぞ、俺は!」
「それでは間に合わないから、貴方にお願いしているのです。もっと大きな報酬を短期間で得る為には重労働でなければいけませんが、私ではこの体が耐えられませんから。ああ、当たり前の話ですけど、人間に危害を加えてはいけませんよ」
「お前マジで良い度胸してるよな。悪魔を捕まえて日中から労働しろとか、アホか!」
「ですが、路銀が無いと私は死んでしまいます。私が死んでしまった場合、ロザリアと会える確率が格段に落ちてしまいますね」
「死体を持ち歩けば問題ない」
「私は結構重いですし。腐る前に、会えると良いですねえ?」
ベゼドラの顔が、思いっっきり苦虫を噛み潰した。
「……覚えとけよ、このエセ神父!」
「私はもう、神父ではありません」
「やかましい!」
ふんっ! と鼻息を飛ばし。
ベゼドラは一人で雑踏の中へと踏み込んでいく
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