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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜銃声と硝煙の輪舞〜
罅
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闘志は欠片ほども折られていない。
気合いを入れる時によく自らの顔を張るなどをするが、あれと同じことだ。痛みは人の意思を挫くこともあるが、その反対として奮い立たせる重要なファクターとなりうる可能性もある。
いつでも互いの剣が届く距離で睨みあいながら、ユウキは口を開いた。
「話すことなんてない。君がこんなトコで何をしてるのか、何を企んでいるのか聞き出す以外はね」
「…………?」
精一杯の威圧を込めて睨みつけたが、しかしボロボロのマントを羽織るアバターは僅かに小首を傾げただけだった。
「おかしな、ことを言う。ここですること、など、
遊び
(
ゲーム
)
しかないだろう」
「…………………………」
それもそうか。
一瞬納得しかけた少女だったが、すぐにいやいやと頭を振った。
「その
SAO
(
ゲーム
)
をメチャクチャにしたのは、どこの人達だったっけ?」
「ク、ク……メチャクチャに、していたのは、お前のかわいい……弟も、だろう」
「――――――ッ」
思わず固まる少女を見、引き攣るような、軋るような嗤いを続けていたザザだが、すぐに引っこめると一転して昏い口調で言葉を続けた。
「……絶剣。お前は、今の自分に、満足しているのか」
は?と。
唐突な疑問に今度はユウキが首を傾げる番になったが、それに構わずゴーストのようなアバターは言葉を紡ぐ。
「力を手にした、俺には、分かる。お前は、今の自分に、満足していない……そう、だろう?ク、ク……」
一瞬、何を言われたのか分からなかった。
次いで、猛毒が身体を巡り、蝕んでいくように、理解した。
「な、んで……そんなこと……」
どうしようもなく声が震えるのが自分でも分かったが、それを自制するまで意識が及ばなかった。いや、及ばせられなかったと言うべきか。
ユウキの言葉を聞き、これまでの掠れたような嗤い声ではない。本当の、無機質ではなく限りなく生々しい負の感情が見え隠れする甲高い哄笑を放った。
「分かる、分かるさ。俺も、そうだった。だが、俺は、手に入れた。本物の、力……何者にも、負けない、力……何者も、及ばない、力を――――《死銃》の力を……!」
「――――な」
に、と叫ぶのを少女は必死で堪えた。
《死銃》とは、そもそもレンとユウキがこの世界に寄越された原因そのものの名前ではなかったか。シゲさんが言った、現実の肉体をも死に至らしめる究極の殺人鬼。
つまり、
ザザ
(
こいつ
)
の言う《力》とは――――
「く……おああああああああアアァァッッ!!」
何かを振り切るようにして放たれた二つの斬撃は宙空に鮮やかなクロスを描いたが、対するゴーストのようなアバターは滑らかなステップでそれを回避した。
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