月詠編 暗雲
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感を抱いた。カリム曰く、私が来るとの連絡を入れてあるから、タンカーに降りたら迎えを寄越してくれると言われてたのに、その迎えが来る気配が微塵も感じられない。そもそも雨天だろうと甲板上に人がいない事自体、異常だ。
「……なんだろ、嫌な予感がする……」
雨の滴が頬を濡らす中、ぽつりと呟く。今の内に様子がおかしいとカリムに連絡を取るべきかもしれへんけど、先に情報を集めてからの方がまとめて話せると思い、タンカーの内部を探ってみる事にした。実はこの時、私はサバタ兄ちゃんがこなしてきた潜入任務っぽい空気に対してドキドキしていた。それが危険であると、頭からすっぽり抜け落ちて……。
早速、すぐそばにあった船橋一階のバルブ式水密ドアの前に立ち、ハンドルに手をかけて回…………まわ……す……!
「ふんぬぬぬぬぬぬ!! うにゅにゅにゅ〜〜!! むぎむぎむぎむぎ!! フンガァー!! ……だ、だめや……力が足りなくて開かない……」
依然として閉まったままの扉から、まだまだ修行が足りぬな、と仙人じみた声が聞こえた気がした。……冗談や。
身体強化魔法を自在に使いこなせるマキナちゃんなら多分開けられると思うけど、コントロールが下手な私はまだ足にしか強化が施せないから腕力を強化出来ず、普通の9歳児の力しか引き出せへん。おかげでこの鋼鉄製の扉の前で、私は敗北に打ちのめされてorzな格好になる。夜天の書の主が、なに扉に負けとんねんって呆れられそうやな……。でも事実やもん。
「しゃあない……どっか開いてる扉を見つけなあかんな……」
気を取り直して扉の前から移動、高いところからなら見つけやすいと思って階段を上っていき、タンカーの側面を進んでいく。すると見た事の無い卵形とも円柱型とも言える奇妙な機械が複数、見回りのように浮遊しながらライトで照らして動き回っているのを発見した。ミッドチルダでは基本的に質量兵器は禁止されとるはずやから、アレは十中八九ろくでもない連中の所有物やろう。どこの誰の物か知らんが、犯罪者の物なら壊しても大丈夫やな。
クルセイダーの銃口から魔力ショットを放ち、例の機械の一つを背後から撃ち抜く。何の防御も出来なかった機械は穴を開けられて沈黙、しばらくしてから爆発する。その音を聞きつけて他の機械もやってくるが、見つけ次第こちらの位置がバレないように片っ端から倒す。結局、外を巡回していたのはたった数機だったようで、あっという間に機械を全滅させる事に成功した。
「ま、こんなもんやろ。私の溢れる才能の前じゃ、この程度の敵は楽勝や!」
そうやって勝ちどきを上げる私やけど、傍から見るとこの時の私は浮かれ過ぎていた。今なら何でもできると調子に乗っていたせいで、カリムへの連絡を怠ってしまったのだ。後にそれが命取りになるとも知らず……。
そ
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