月詠編 暗雲
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に追い込んだ彼女の動きに、なぜか見覚えがあった。
「ぐはっ! ……な、なんで……その、動きは……!?」
「CQC……彼も使っていた近接格闘術だ。彼の近い位置にいたおまえなら、よく知っているだろう?」
「そんな……なぜ、あんたが……!」
「今の時代、探せば教本ぐらい見つけられるという事さ。まだ完全には使いこなせていないのだが、それより……おまえを連れて行けば使い道がありそうだ」
「ッ! ……やらせん、やらせはせん……! スプレッド!」
「ぬっ!?」
悪あがきに近い形でクルセイダーに溜めた魔力の塊を突き出し、危険を察知した彼女は後ろへ飛びずさる。さっきのCQCの影響で平衡感覚が乱れたままだが、彼女の拘束から解放された私はふらつきながらも立ち上がり、決死の表情で彼女を睨み付ける。
「私は……私は捕まるわけにはいかへん……! こんな所で……くたばってたまるかいな!!」
「……ほう? その歳で中々の根性……面白い。だが……齢9歳の小娘ごときの意地と覚悟だけで全てが上手く行く訳が無い。確かに魔導師としては破格の才能を持っている……しかしそれは管理局が定めた基準でのエリートなだけで、実際の戦場で生き残るための能力や資質は全く備わっていない」
「なんやと……!?」
「周囲の警戒もおろそか、仲間意識が強すぎて罠を警戒しない、近接格闘術の一つも身に付けていない、魔法頼りの本局流戦術しか出来ない。それでは本物の戦場で生き残れないぞ、夜天の主?」
「な……どうしてそれを!?」
「そもそもおまえは能力的に見て接近戦に向いていない、どちらかと言うと遠距離向きだ。騎士や仲間を動かして都合の良い状況を作り出し、敵を追い込んだ所におまえの殲滅魔法を放つ、というようにな。彼に憧れるのは勝手だが、自分の役割をまずは認識してもらわねば、おまえ達はファーヴニルに対抗することも出来ず、すぐにこの世界は崩壊する。ドクターのためにも、おまえ達にはこの世界を守り抜いてもらわねば困るのでな」
「ドクター? そいつは一体……うぐっ!?」
みぞおちに強い衝撃が伝わり、私は為すすべなく第二船倉の境にある壁に激突、床に崩れ落ちる。意識が薄弱となる中、今の攻撃をした紫の髪の女性が、ため息をついて銀髪の方に何かを伝える。
「少し話し過ぎだ、チンク。タイムリミットだ」
「トーレか、すまない。少々思う所があった故、つい手心を加えてしまった」
「そっか……この娘は彼が守ろうとした者の一人だったな。私としては彼ともう一度会えたら、今度は正々堂々戦士として再戦を挑みたい。兵器であるはずの私達がそう思う程、彼との戦いは実に有意義なひと時だった」
「ああ、だから彼が守るに相応しい人間なのか、少し試させてもらった。この先ファ
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