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黒魔術師松本沙耶香 妖女篇
24部分:第二十四章
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第二十四章

「それの紋章ね」
「はい、まさに」
「それで力を増幅させているわね」
「尋常ではない戦いになりそうね」
「承知のうえよ」
 もうわかっているというのだった。
「それはね」
「では今から」
「行きましょう」
 ここで階段の前に着いた。その階段を一段ずつあがっていく。そうして宮殿のその三本の大理石の柱の間を抜けてであった。中に入った。
 中に入るとそこは漆黒であった。漆黒であったが気配は明らかにあった。
 そして二人が扉を沙耶香が右手の親指と人差し指を鳴らしたことで出した魔術で閉めてス数歩前に出るとだった。部屋の両端に一つずつ火が連なって出て来たのであった。
「ようこそ、我が宮殿へ」
「ええ、待っていたようね」
「お待たせしたでしょうか」
「いいえ」
 依子であった。彼女は二人の前に立っていた。そこは大広間だった。そこに一人で立って妖艶な整った笑みを浮かべているのであった。
 そうしてその笑みで。二人にさらに告げてきたのであった。
「今まで私もね」
「どうしていたのかしら」
「楽しんでいたわ」
 妖しい美しさに満ちた笑みであった。
「私もね」
「そうなの。それに」
 ここで自分達の左右を見る沙耶香であった。するとそこには。
 灯り、即ちキャンドルはただそこにあるのではなかった。見れば美女達がそれを手に持っていた。そのうえでそこに立っているのであった。
「貴女が手に入れた美女達に持たせているのね」
「戦いの場を飾るにはいいではなくて?」
 こう沙耶香に対して述べる依子だった。
「美女達は」
「それはそうね。ただ今一つ芸がないわね」
「そうかしら」
「貴女にしてはね」
 沙耶香も微笑んでいた。その微笑はやはり妖しいものであった。
「随分と。素っ気無いわね」
「勿論彼女達だけではないわ」
 沙耶香の言葉に応えるようにしての言葉だった。
「私のコレクションはね」
「そうなの」
「見なさい」
 依子がこう言って右手を少しあげるとだった。部屋の中にそれぞれギリシアの女神達の服を着た美女達が出て来たのであった。
「彼女達をね」
「成程」
 その彼女達を見て声をあげた速水だった。
「こうした演出を用意しておられたのですか」
「どうかしら」
「これで貴女らしくなりましたね」 
 速水の返答はこうしたものだった。
「ようやく、といったところでしょうか」
「そしてわかってくれたわね
「はい」
「これでね」
 速水だけでなく沙耶香も応えたのだった。
「貴女らしいわ。この趣味はね」
「では。はじめようかしら」
 依子はその周りに置かれている動かない美女達の中で告げた。まさに彫刻となっている彼女達に囲まれたうえで。
「私が勝つか貴女達が勝つのか」
「そうね。
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