暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
不透明な光 4
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祝賀の空気に包まれた村は、来訪者を快く迎え入れてくれた。

 結婚式が始まると、こっそり男の後を尾けてきたベゼドラが、花嫁の首を飾る貝殻のペンダントを見て、「アリアの力を感じる」と言い出した。

 クロスツェルにペンダントの出所を詳しく調べろと言い残し、村の事情も聞かずに急いで屋敷へ戻ったベゼドラは、魂達を喰う代わりに少女を助ける契約を交わした。
 そしてそれは果たされ、少女達は悪魔から解放されたのだ。



「まあ、悪魔が自分の生命力を人間の娘に分け与えるなんて、珍しい場面も見られたしな。その点じゃ愉快だったが」
「悪魔の生命力? グリークさんの生命力ではなく?」

 皮肉な笑みを浮かべるベゼドラに、クロスツェルは首を傾げる。

「両方だ。男の生命力だけじゃ足りなかったし、悪魔の生命力を注ぐ為にも男の体を維持する生命力まで使い切るわけにはいかなかった、ってトコか」
「もしかして悪魔が二度も同じ人物と契約したのは、グリークさんの肉体を保持する為でもあったのでしょうか?」
「ああ、多分な。実体が無いってのは、マジで不便なんだよな。っつーか、人間の為に自分の命を削る悪魔自体、初めて見た。おかげで、紅毛の小娘の生命力を喰らっても持ち直せないほど弱り切って、終いには銀髪男の体から逃げ出せなくなってたみたいだが……。そこまで愛する女に殺されたんだ。本望だろうさ」
「貴方も、ロザリアになら殺されても良い、と?」
「断る。誰が殺されてやるか。俺が殺すんならともかく」

 そんなことはできないでしょうに……と、クロスツェルは苦笑する。

「それより、貝殻のほうはどうだ?」
「当たりです。あの貝殻のペンダントは、アリア自身が直接、村の少年へと託した物でした。幸せの貝殻だと言って渡したようですが、この村にそんな伝承や願掛けは存在しません。大人達は、子供の作り話だと思っています」
「やっぱりな。だが、屋敷中を調べ回っても、他に仕掛けらしい仕掛けは、一切出て来なかった。何かしらの事情は知ってても、自分の手で直に助けるつもりはなかったってことか」
「アリアの真意は読めませんが……単純な人助けをするつもりはないのかも知れません。今の彼女なら、少女一人を助けるなど造作もない筈ですから」

 村に振り返って、古びた教会を見つめた。
 屋根も外壁も酷く傷んで、全体的に色がくすんでいる。
 かつてはもっと多くの信徒が居たというアリア信仰の教会には、今はもう在任の神父すら居ない。
 祭事を行うなどの一時、街から派遣される代理神父がいるだけらしい。
 屋敷の男に憑いていた悪魔は、この無人教会に封印されていたのだろうとベゼドラは言う。
 自分の他にも封印された悪魔が居るとは思わなかった、とも。

「俺が知ってる限りじゃ、俺が封印され
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