暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
不透明な光 4
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 「俺が封印される前は、どんな辺境へも飛んで行って大袈裟なほど暴れてたらしいがな」
 「……アリアは、人間に愛想を尽かしたのでしょうか」
 偽りの神々を崇め、人間同士で争い、かつて世界を救った者への感謝すら忘れているという現代の人間。
 呆れてしまったとしても、仕方ないのだろうけれど。
 「どうだかな。それなら悪魔避けの力を込めた貝殻なんぞ渡したりしないと思うが。何にせよ、アリアの影は掴んだ。やっぱり、村から手当たり次第に行くか」
 「……そうですね」
 アリアはまだ人世界に関わっている。それが判っただけでも充分な収穫だ。
 離れて行かない内に手を伸ばさなくては。


 「お世話になりました」
 「また来てくださいな」
 宿に戻って支払いを済ませ、ふくよかな体型の婦人に笑顔で見送られながら村の入り口へ向かう。
 途中、玄関扉を開いたままの家を見かけた。
 横目でちらりと覗いた中では、木製の四角いテーブルに上半身を預けて酒を飲んでいたらしい、髭を蓄えた中年の男性が、顔を真っ赤にしながら泣いていた。
 「お兄さーん!」
 あと一歩で村の外へ出るという所で、元気の良い幼子の声が背中を叩いた。
 振り向くと、黒髪の可愛いらしい双子が大きく手を振っている。
 「またアリア村に遊びに来てねー! まってるからねー!」
 波の輝きを背負う無邪気な笑顔に手を振り返して、私達は忘れられゆく女神の村に別れを告げた。


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