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逆さの砂時計
不透明な光 4
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むからと。
 魂達は、男が悪魔憑きだとは理解していなかった。妹を愛するあまりに壊れてしまったのだと言う。とても可哀想な子供達なのだと。
 とりあえずベゼドラは屋敷で様子を見つつ、クロスツェルが村まで紅い髪の少女を見に行く事にした。
 元々訪れるつもりだった海辺の村では、結婚式の準備が整いつつあった。
 木造の住宅が建ち並ぶ小さな漁村の民は、船が出せなくて困っていた所を屋敷の男に助けられたと喜んでいた。あんな器量の良い男に嫁げる少女は幸せ者だなと。
 屋敷と村、双方の事情を知ってしまったクロスツェルは、複雑な思いで宿を探す。祝賀の空気に包まれた村は、来訪者を快く迎え入れてくれた。
 式が始まると、こっそり男に付いて来たベゼドラが、少女の首に掛けられた貝殻のネックレスを見てアリアの力を感じると言い出した。クロスツェルに貝殻のネックレスを調べろと言い残して、村の事情も聞かずに屋敷へ戻る。
 ベゼドラは、魂達を喰う代わりに少女を助ける契約を交わした。
 そしてそれは果たされ、少女達は悪魔から解放されたのだ。


 「まぁ、悪魔が自分の生命力を人間の娘に分け与えるなんて、珍しいものも見られたしな。その点じゃ愉快だったが」
 「悪魔の生命力? 彼の生命力ではなく?」
 「両方だ。男の生命力だけじゃ到底足りなかったし、悪魔の生命力を注ぐ為に男の生命力を使い切る訳にもいかなかった……ってトコか。実体が無いってのは本当に不便なんだよな。ってか、自分の命を削る悪魔自体初めて見た。おかげで弱って人間の器から逃げられなくなってたみたいだが。其処まで愛する女に殺されたんだ、本望だろうさ」
 「……貴方も、ロザリアになら殺されても良い、と?」
 「断る。誰が殺されてやるか。俺が殺すんならともかく」
 そんな事はできないでしょうに……と、クロスツェルは苦笑する。
 「それより、貝殻の方はどうだ?」
 「当たりです。あの貝殻は、アリアが村の少年に託した物でした。幸せの貝殻と言って渡したようですが、この村にそんな伝承や願掛けは存在していません。あれを作った大人は、子供達の作り話だと思っています」
 「何かしらの事情は知ってても、直接助ける気は無かったって事か」
 「アリアの真意は読めませんが……単純な人助けをするつもりは無いのかも知れません。今の彼女なら、レネージュを助けるなど造作もない筈ですから」
 村に振り返って、古びた教会を見つめた。屋根も外壁も痛んでくすんでいる。
 かつてはもっと多くの信徒が居たという女神アリアの教会には、今はもう在任の神父も居ない。祭事を行う等の一時、街から派遣される代理神父がいるだけらしい。屋敷の男に憑いた悪魔は、此処に封印されていたのだろうとベゼドラは言う。
 自分以外に封印された悪魔がいるとは思わなかった……とも
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