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黒魔術師松本沙耶香 妖女篇
2部分:第二章
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第二章

「罪を犯して」
「罪を・・・・・・」
「そう、罪を」
 犯せというのである。その言葉で誘い。
 また言った。こう。
「甘い罪を」
「そして許しを」
「甘い罪の後で厳かな許しを得られるのよ」
 妖しい目の光がさらに増していた。
「さあ。だから私のところへ」
「・・・・・・はい」
 遂にであった。女の右手に己の右手を重ねた。そうしてそのまま何処かへと消える。女が姿を現わしたのはパリにおいてよく娼婦達が逢引をするというあの森からだった。そこから出て満ち足りた笑みで微笑んでいるのであった。
 時は夕刻だった。街は急に暗くなっていき青から赤に、そして紫から黒くなろうとしている。深い紫の中に落ちようとしているパリの街中に再び姿を現わした彼女に対して。目の前に一人の若い男が出て来たのであった。
「松本沙耶香さんですね」
「そうよ」
 その爽やかなブロンドの奇麗に前にセットされた髪と昼の中の木を思わせるエメラルドグリーンの瞳に舞台俳優を思わせるマスクの男に応えた。彼はライトブルーのスーツを奇麗に着こなし白いコートを着ていた。その彼の言葉に対して応えたのである。
「それが私の名前だけれど」
「それではです」
 彼女、松本沙耶香が名乗ったのを受けてその美麗な男はさらに言ってきたのであった。
「お話は窺っていますね」
「このパリでの話ね」
「はい、実はです」
 ここで男は話すのであった。沙耶香の前に立って。
「その前に場所を変えましょう」
「何かあるのかしら」
「いえ、ここでは寒いので」
 だからだというのである。
「パリの寒さは格別です。ですから何処か別の場所で」
「レストランで食事でも採りながらかしら」
「はい、それで如何でしょうか」
「有り難い申し出だけれどそれは遠慮するわ」
 男の言葉に静かにこう返した沙耶香だった。
「それはね」
「そうですか」
「今夜は予定が入っているのよ」
 だからだというのである。
「バスティーユ座でね。オペラを観ながらね」
「わかりました。それでは」
「ええ。だから話はここで聞かせてもらうわ」
 こう述べる沙耶香だった。
「依頼の話ね」
「そうです。私はジョルジュ=ド=モンテス」 
 若い男はこう名乗ってきた。
「フランス政府の者です」
「行政府かしら。それとも与党かしら」
「行政府です」
 そこの人間だというのである。
「大統領府のスタッフでして」
「ではこの話は大統領からの話と考えていいのかしら」
「はい、そう思って下さい」
 まさにその通りだと答えるモンテスだった。そのうえで沙耶香にさらに話すのであった。
「それでですが」
「このパリで近頃怒っている事件」
「そうです。実に謎の多い事件です」
 語るモンテスのその顔が曇
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