A's編
第三十三話 後(1)
[7/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
幸へと導いているという自覚を持ちながら魔導書と名乗ることは私の矜持が許さない」
その眼に宿っているのは彼女が言うように自らの存在理由、そして矜持―――プライドなのだろう。
主を不幸にするデバイス―――それは今までのリィンフォースさんだ。闇の書と呼ばれた魔導書の存在だ。その存在から逃れたにも関わらず、また主を不幸にする。それにリィンフォースさんは耐えられないという。
デバイスは、リィンフォースさんのような存在は、寿命がない。メンテナンスさえすれば、永久にその存在を保つことができるだろう。もしかしたら、親から子へ、子から孫へ託されるようなものなのかもしれない。だからこそ、彼女は自らの存在定義に、プライドにこだわるのだろう。
「それに―――」
リィンフォースさんはどこか遠くを見るような目をして、何か懐かしむような、何か大切なものを思い出すような目をして、言葉を続ける。
「私はあのとき、確かに主の言葉で救われた。―――それだけで十分だろう?」
本当に満足そうに、それだけで十分幸せだ、というようにリィンフォースさんは笑った。そこには後悔の色は見えない。本当に彼女ははやてちゃんの言葉で救われたことで満足していることが理解できるような澄んだ笑みだった。
「もともと、いつ終わるとも知れない地獄の中にいたのだ。自ら選んだ主に憑りつき、蒐集という名のもとに人々を襲い、最後には主さえも手にかけてきた。気が狂いそうな地獄の中、気が狂うことも許されずに長い………長い年月を過ごしてきた」
………先ほどのような澄んだ笑みとは何も変わらない。だが、その笑みは先ほどとは異なり、どこか疲れたような笑みにも見える。
「もう、私が―――夜天の書はここで幕を閉じるべきなんだ」
―――ああ、そうか。
僕はリィンフォースさんの言葉でようやく納得できた。つまり、ここがリィンフォースさんの終着点なのだ。これ以上は蛇足に過ぎない。確かにはやてちゃんとの日々は幸せになるかもしれない。リィンフォースさんが想像したような他の被害者から責められるようなことはないかもしれない。
だが、結局、それらは関係ないのだ。彼女にとって、ここが終着点。今まで呪われた身体によって主を奪ってきた罪悪感、ヴォルケンリッタ―という半身を失った喪失感、はやてちゃんによって救われた安堵感。それらすべてをひっくるめて、ここが終着点なのだろう。そう彼女が決めてしまったのだ。
ならば、それは誰にも覆すことはできない。ここに残って写真を見ていたのも、弔いと言いながらも自分に残された時間に浸っていたのだろう。それは長い、長すぎる人生の余韻のようなものなのかもしれない。
「………もう一つだけいいですか?」
「ん? なんだ、少年よ」
「
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ