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リリカルってなんですか?
A's編
第三十三話 後(1)
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して。その時代のベルカは戦乱の真っただ中で、戦闘があれば、誰かが死ぬのも珍しくない時代だった」

 闇の書―――夜天の書、少し説明を聞いた限りでは、延々と自動転生機能で世界を巡り、魔法を集める魔導書だと聞いた。ならば、彼女が語っているのは遙か昔に体験したことなのだろう。もっとも、僕はベルカという土地柄を知らないが、おそらく次元世界―――ミットチルダのような場所なんだろうということはなんとなく予想ができる。

「いつ誰が死んでもおかしくない世界で、誰かを弔うことは酒を飲みながら死んだ人間のことを楽しく語り合うことだ、とその時に教えてもらったよ。死んだ人間も暗くなることを望んでいないし、哀しみは酒が忘れさせてくれるとな」

 だから、今回は無理を言って酒を飲ませてもらっているんだ、と入っていたお酒を一気に飲み干しながら言う。

「そうだ、これは彼らの―――私の守護騎士だったヴォルケンリッタ―への弔いの酒だ。そして、これは―――」

 そう言いながら、リィンフォースさんは、まだ半分ほど入っている瓶を傾けてグラスにお酒を注ぐ。

「これは、自分自身の弔いの酒だな」

「………え?」

 リィンフォースさんが言っている言葉の意味を理解するのに少しの間が必要だった。

 ―――彼女は今、なんといった? 自らの弔いの酒だと口にしなかっただろうか。

 突然の言葉に僕が呆けている表情が面白かったのだろうか、彼女は不意に吹き出すようにくっ、と笑った。その仕草を見て、ああ、何だ、からかわれただけか、とふぅと息を吐いて安堵したのだが、そんな僕の安堵を否定するように彼女は真面目な顔になり告げた。

「少年よ、残念だが、冗談でもなんでもない。明日、私は消える」

 ―――消える。その言葉が非常に重く感じられた。今まで亡くなった人たちのことを話していたからだろうか。何よりも信じたくなかったのかもしれない。みんなの協力があって、この闇の書事件と言われた事件は幕を閉じたはずだ。なのに、これ以上の犠牲者が出ることを信じられない、いや、信じたくなかったのかもしれない。

「どう、してですか?」

 ようやく絞り出したかのような声は若干震えていた。それを聞いてどうするのだ? という思いと、納得してしまったらどうするんだ? という思いがあったからだ。認めるのが怖い、納得してしまうのが怖い。だが、それ以上に、何も知らないところで事態が進んでしまうことが怖かった。だから、震える唇で僕は彼女に尋ねるしかないのだ。

「もう、闇の書は―――夜天の書を闇の書に変えていた部分はなのはちゃんが消してしまったんでしょう?」

 少なくとも事の顛末を僕はそう聞いていた。だから、リィンフォースさんが消えると口にした時に信じられなかったのだ。

 僕は
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