A's編
第三十三話 中
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んはすべてを承知したように、大丈夫というようににこっ、と笑みを深めた。
「ちょっと、黙ってないで、こんな場所に連れてきた理由とこんな状況になってきた理由を話しなさいよっ!!」
僕がすずかちゃんが落ち着いている状況について考えを巡らせている沈黙を意味のない沈黙ととらえたのだろう。アリサちゃんの口調からは話をするなら部屋でも十分なのにどうして連れてきたんだ? という怒りのようなものが見え隠れしていた。
「ごめんごめん、今から説明するから。………そうだね、最初に二人をここに連れてきた理由かな。上を見てごらん」
僕がそう言いながら首を傾け、上を見る。僕につられるようにして二人も上を向いたのがわかった。そして、同時に発せられる「うわぁ」という感嘆のこもった声。
僕たちが見ているのは空だ。ただし、この空は遮るものが何もないうえに、下からの光は雲が遮ってくれている。ただただ夜の闇が広がる空。その中を明るく点々と彩るのは無数の星々だった。しうも、季節は冬だ。空気は乾燥しており、天体観測にはピッタリの気候ともいえる。ゆえに、そこに広がるのは冬の星々。プラネタリウムなどで見るような贋物ではなく、本物の空だ。
「メリークリスマス! 僕からのプレゼントは気に入ってくれたかな?」
えっ? という顔をして二人が僕を見る。
実は、今回のことに巻き込まれて二人にクリスマスプレゼントが用意できなかった。だからこその代替案。本当は時間を見て買いに行こうと思っていたのだが、今回のことで本当に時間がなくなってしまった。だから、これを思いついたのだ。もっとも、思いついたのは、ここに来る直前だったのだが、それは秘密である。
「ま、まぁまぁね!」
「素敵だと思うよ」
アリサちゃんは感動したことが照れくさいのかそっぽ向きながら、すずかちゃんはくすっ、と笑みを残した後に素直に感想を述べてくれた。
―――あれ? もしかして、すずかちゃんにはばれているのだろうか?
タイミングから逆算すれば考えることは可能だが………まあ、あまり考えないほうが精神衛生的にはいいだろう。そう結論付けて、僕はアリサちゃんとすずかちゃんに倣うように上を向く。
そこに輝く星々は僕の中での疑問などどうでもいい、と言わんばかりに輝いていた。
やがて、どれほど時間が経っただろうか、上を向くための首が疲れてきたのか、最初に声を出したのはアリサちゃんだった。
「ねぇ、ショウ、そろそろ話してくれてもいいんじゃない?」
飽きてきたのか、あるいは焦れてきたのか、僕にはわからないが、最初に事を進めようとしてきたのはアリサちゃんだった。
「そうだね、この光景なら季節が変わればまた連れてきてもらってもいいわけだし」
事の次第
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