A's編
第三十三話 中
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験したことだが、両手の二人は当然、初めての事だろう。え、えぇぇぇ、という驚きの声とうわぁ、とある種感激したような声が同時に聞こえた。二人とも寒くないかな? とは思ったが、僕たちの周囲はシールドで囲んでいる手を離しても問題はないし、温度も問題ないだろう。
アリサちゃんとすずかちゃんと手をつないだ僕は徐々に高度を上げていく。海鳴で一番高い高層ビルを越えて、さらにそれよりも高い場所へ。各家の明かりの一つ一つが認識できなくなり、100万ドルの夜景とは古いが、そこそこの夜景になり、それでも高度を上げる。やがて、高度はついに今日の海鳴を覆い隠し、雪を降らせている雲にも届き、その中さえも突っ切ってしまう。
雲を通る時にはさすがに二人からも、困惑の声と悲鳴が聞こえたが、あえて無視した。なぜなら、僕が連れて行きたい世界はその先にあるのだから。
やがて、分厚い雲を抜けた先。地上からの光が届かない雲の絨毯が広がる空の世界へようやく到着し、僕は高度を上げるのをやめた。
「さぁ、着いたよ」
ここが目的地だ、と言わんばかりに僕は今まで先導していた手をつないだまま、まるで円になるように二人と向き合った。
「こ、ここって、空の上?」
さすがに今まで来たことのない場所に連れてこられて驚いているのだろう。今まで空を飛んできたのだから当然のことをアリサちゃんが問う。もっとも、その中には疑問と一緒に恐怖も混じっていると思う。当たり前だ、僕は魔法に触れてそろそろ一年になろうとしているが、アリサちゃんはたった今触れたばかりなのだから。
「そうだよ。でも、大丈夫。雲で下は見えないし、シールド………檻みたいなもので包んでいるから落ちることはないよ」
できるだけ安心できるように僕は彼女に説明する。アリサちゃんは一瞬、何かを言いたそうな表情をしていたが、やがて諦めたようにはぁ、と大きくため息を吐いた。来てしまった以上、仕方ないと思ったのか、あるいは、これからの説明しだいにしようと思ったのか、僕にはわからない。
とりあえず、アリサちゃんが落ち着いてくれたので、よかった。
さて、すずかちゃんは、と思い、もう片方に視線を向けてみれば、すずかちゃんは意外にも落ちつた様子で微笑んでいた。まるで、そこにいても何の不思議もない、というように、日常であるかのようにすずかちゃんは微笑んでいた。
不思議な現象に巻き込まれているはずなのになぜだろう? とは思ったが、よくよく考えてみれば、すずかちゃんだって似たような秘密を抱えた本人だ。世界には不思議があふれている。吸血鬼がいるなら、魔法使いがいてもおかしくない、と考えていてもおかしくないだろう。
―――転生者はどうかはわからないが。
僕が考えていることが分かったのか、すずかちゃ
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