A's編
第三十三話 中
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構えていたのだろうか、アリサちゃんは最初から待ち構えていたのだろう。一回のコールが鳴り終わる前に電話を取ってくれたようだ。
『ショウ? もう着いたの? 今から玄関に行くから待ってなさい』
「ああ、違う、違うよ、アリサちゃん」
もう説明を聞きたくて、居ても立っても居られないのだろう。アリサちゃんの声からも焦っていることがよくわかる口調だった。だが、ここで玄関に向かわれては僕も困るのだ。
『どういうことよ?』
「すずかちゃんとバルコニーに出てきてよ」
『どういうことよ?』
「いいから」
何言ってるの? と言いたげな無言の間が発生したが、僕の悪戯っぽい笑いが届いていたのか、仕方ない、と言わんばかりに大きくため息を吐くと、『分かったわよ』と応えてくれた。
もともとバルコニーは、アリサちゃんの部屋から直接行くことができる。だから、アリサちゃんが携帯を片手にすずかちゃんと一緒に出てきたのは、アリサちゃんが答えてからすぐのことで、バルコニーに出てきたアリサちゃんとすずかちゃんが、宙に浮いている僕を見て、信じられないものを見た、と言わんばかりに目を大きく見開いていた。
そんな彼女たちの想像通りの姿にたまらず苦笑し、手に持っていた携帯をポケットに仕舞うと、空いた両手を彼女たちに誘うように差し出す。
「こんばんは、お嬢様方。少し寒いかもしれませんが、僕と空の散歩に行きませんか」
芝居がかった言い方になってしまったのは、魔法という非日常を演出するためのものだった。外から見れば、宙に浮いている不審者でしかないのだけれど………。
ぽかんと呆けているアリサちゃんとすずかちゃんだったが、最初に正気になったのはすずかちゃんのほうだった。呆けていた表情がやがて納得したような表情になると、にっこりとした笑みを浮かべて僕が差し出していた右手をとる。今まですずかちゃんは家の中にいて、僕は外にいたためか、手の平から感じられる温もりはとても温かく感じられる。逆にすずかちゃんには冷たく感じられたのか、「冷たいね、大丈夫」、とこの非日常的な状況において、平凡なことを問われてしまう始末だ。
「さあ、アリサちゃんも」
すずかちゃんに握られた手とは逆の手をアリサちゃんに差し出す。やがて、意を決したようにえいっ、と半ば勢いに任せたように一歩を踏み出すと空いているもう片手をぎゅっと握った。僕は改めて二人が握っている両手を強く握り返すと、これから目的としている場所に顔を向ける。
―――つまり、天空だ。
「いくよっ!」
空中を地面のように蹴りだす。それ自体には意味はない。だが、僕の意志をくみ取ったように魔力は推進力となって子ども三人分の体重を遙か上空へと連れて行ってくれる。
僕は何度も体
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