A's編
第三十三話 中
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からアリサちゃんの家までにかかる時間はそんなに必要なかった。
『早いわね。分かったわ、着いたらまた電話しなさいよ』
「分かったよ。でも、電話したら、玄関じゃなくてアリサちゃんの部屋のバルコニーに出てくれないかな」
僕の言葉に少し不思議に思ったのか、んんん? と考えるような不思議な間が開いた。だが、何か納得できたのだろう、よくわからないけど、という色を残しながらアリサちゃんは再び電話口の向こうから答えを返してくれた。
『変なこと言うわね。でも、分かったわ。すずかと一緒に出ればいいのね?』
「うん、二人一緒に。できれば、寒くない格好をしてくれると手間が省けるかな?」
そう、これから連れて行くのは魔法の世界。ただし、防寒まで完璧か? と問われてもイエスとは答えられない。今、僕が寒さを感じてコートを着ているのが何よりの証拠だ。ユーノくんなら結界の中も完璧なのかもしれないけど。
『なに? 外に出るの?』
「うん、まあ、近いかな。そのほうが都合がいいしね」
アリサちゃんの部屋でもいいのかもしれない。だが、それだと万が一にもアリサちゃんの家族に聞かれてしまう可能性もある。魔法など与太話にしかならないだろうが、それでも魔法の世界を見せるのと今まで黙っていたことに関してのお詫びの意味もあるのだから。
『よくわからないけど、準備だけはしておくわ』
「うん、よろしくね」
それじゃ、また、あとで、とそれだけ言うと僕は携帯の通話ボタンを押して、アリサちゃんとの電話を切り、ポケットの奥に携帯を押し込む。
さて、早く向かわないとな、と思いながら携帯に向けていた意識を飛行魔法に向ける。集中していると魔力に影響があるのか、少しだけスピードが上がる。誰もいない空を飛びながら、ふと眼下を眺めるとそこに広がっていたのは光の渦ともいうべき、いつもよりも過剰に装飾された街並みだった。
そういえば、今日はクリスマスイブだったな、と今更ながらに思い出し、これからの僕が行うことはクリスマスプレゼントになるだろうか? と今年は用意していなかった彼女たちへのプレゼントの代わりになることを願いながら、僕はアリサちゃんの家へと向かうスピードを上げた。
◇ ◇ ◇
空を飛ぶこと十数分伍、僕は海鳴でも一番目か二番目に大きな西洋風の館の一室の前に浮かんでいた。童謡の中でしか見たことないようなバルコニーの先にあるのはアリサちゃんの部屋だ。僕も英会話を教えてもらうために入ったことがある。電気がついているところをみるとどうやら彼女たちは約束通り、部屋にいてくれているようだ。
それを確認した後、僕はコートの中から再び携帯を取り出して、発信履歴からアリサちゃんの番号をコールする。最初から待ち
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