A's編
第三十三話 中
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ある。忙しくて僕に出番がないというのであれば、遠慮なく使わせてもらおうではないか。
「では、遠慮なく行かせてもらいますよ」
「ああ、行っておいで。遅くならないうちに連絡をくれればいいから」
僕を心配するような一言で笑顔で僕を見送るクロノさんはきっと親になったならいい父親になるんだろうな、と思考の片隅で思った。
◇ ◇ ◇
「雪か………」
アースラから地上へ転送され、人目のない空き地に送られたのだが、室内から急に外に放り出された気温の変化を感じ、あらかじめ着ていたコートの襟を風が入らないように閉じた後、ふと目の前にゆっくりと舞うように落ちている冷たく白い綿のようなものを見て、思わずつぶやいていた。
「どおりで寒いわけだ」
手がかじかむような寒さというが、まさしく寒い。ポケットの中で暖を求めてしまうほどに。加納であるならば、このまま家に帰って、こたつの中でゆっくりしたい。しかし、それは許されないだろう。仮にやったとすれば、次にアリサちゃんとすずかちゃんに出会った時に気まずいのは間違いない。
なにより、僕自身がもやもやとしてしまう。
あの場所で出会わなければ、クロノさんから秘密にするように言われていた、という言葉を免罪符にはできただろうが。見つかってしまった、巻き込んでしまった今となってはその言い訳も意味をなさない。すでに知られてしまったことを友人に話さないのは気持ちが悪い。
だから、あの二人に話しに行こう。おとぎ話の中にしか存在しなかった魔法という夢のような不思議を。
しかし、ただ話すだけというのも味気ない。そもそも、せっかく魔法というものを知ったのだ。いや、知ったというよりも、知ってしまったというべきかもしれないが。それでも、その魔法を知ったのが、あんな事件みたいな危険な目にあいそうな時というのは、運が悪い。
確かに魔法は闇の書の様に危険なものもあるが、楽しいことだってあるのだ。もっとも、僕からしてみれば新しい技術に目を輝かせるようなものかもしれないが。
だから、少しだけでも魔法の良いところを経験してもらおうと思った。
「S2U、周囲に人の影は?」
『No problem,boss』
クロノさんから借りたままのストレージデバイス『S2U』は女性の声でストレージらしく簡潔に応えてくれた。レイジングハートの様に人間味のある答えもいいと思うが、これくらい機械らしく簡潔なのもまた味があると思うのは僕がもともと理系の人間だからだろうか。
さて、僕の機械の好みは別として、人の気配がないのであれば早速向かうとしよう。
「よっ、と」
とん、と地面を蹴りだすと、僕は飛行魔法を使い、空へと飛びだした。雪の舞う空の中
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